芝生観察日記 第106話

芝生観察日記の第百六話です。

令和二年9月 8日(火)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 

 残暑は厳しく、汗ばむ陽気が続きますが、朝夕にはだいぶ過ごし易くなってきました。

 周辺で聞かれる虫の音が、セミの声からコオロギに移り変わり、季節の移り変わりを感じます。

 いよいよ秋を迎え、夏芝の生育期間も残り少なくなってきました。

 先週5日の土曜日には、今シーズンのJリーグの行方を占う大一番となる首位川崎フロンターレと我らがF・マリノスの試合が行われましたが、結果は1対3という残念な結果で終わりました。

 ①全景.jpg

 試合前のフィールド全景です。前回同様に夏芝とは思えない鮮やかなゼブラ模様がひと際映えました。

 試合後の状況は、7月12日に行われたFC東京戦から数えて6試合目となるこの試合が、今シーズン最も安定した状態だったと評価しています。

 中継の映像は、いつもと変わらずバミューダグラス特有の毛羽立つような細かな傷が散乱して見えましたが、実際試合が終わった後のピッチを見てみると、これまでのように芝の切れっ端が散乱することもなく、芝刈りをすれば試合をした後とは思えない状態でした。

②フィールド.jpg

 試合後のピッチですが、所々毛羽立っている様子が窺えます。しかし、芝の切れっ端は見られません。

③芝生1.jpg④芝生2.jpg

 試合当日は、乾燥してドライな状態でした。前日に刈高12㍉で刈った芝生はやや伸びてボサボサした印象でしたが、その分ハイブリッド芝の課題である表面硬度の弾力を和らげている印象でした。

 夏場の晴れた日は、基本毎日散水していますが、試合当日のフィールド周辺は芝生作業だけでなく、多くの関係部署が朝早くから設営作業を行っているため散水は配慮して見送りました。

 その影響もあって、芝生が伸びて表面の弾力は増したものの、土壌の乾燥により硬度への影響は±0といった具合でした。これまで試合を迎える前には、バーチドレンを掛けて土壌を解すことで表面硬度の改善をしてきましたが、この試合はバーチドレンを掛けずに迎えたため、表面硬度が96Gmとかなり高い数値でした。

 やはりハイブリッド芝において適切なコンディションを維持するには、芝生の根や茎がしっかり土壌と絡み合ったマット層を形成させなければならないようです。

 そのため、表面硬度の改善と根の発根促進を目的としてエアレーションを行いました。今回は、細めの7㍉口径の側面排出タインを使ってコアリングを行いました。

 エアレーションのタインには、大きく分けて3通りあります。抜いた芝生のコアをパイプの上部から排出する中空タイプと、今回使った側面から排出するタイプのほか、太い釘で穴だけ空けるむくタイプのタインがあります。しかし、実際は他にも十字タイプやスライシングタイプなど、芝生の状態や季節、目的に応じてタインの種類を使い分けています。今回はタインの写真が揃っていなのでまた別の機会にでもご紹介したいと思います。

⑤トラクター.jpg⑥エアレーション.jpg

 次の試合は、13日(日)のセレッソ大阪戦です。どれだけ表面硬度が改善されたか楽しみです。

 まだ残暑はしばらく続くようですが、新型コロナウイルスだけでなく、熱中症の予防にもお気を付けください。