スタッフブログ|日産スタジアム
芝生のとっておき話(9)
2004/12/27
 

   ?厳冬期の芝生養生法?

   みなさんこんにちは。Jリーグチャンピオンシップ(2004年12月)は白熱した熱戦のうえ、横浜F・マリノスが2年連続の年間チャンピオンという最高の結果で幕を閉じました。
   しかし、これでサッカーシーズンが終了したわけではありません。ここ横浜国際総合競技場では、来年より世界クラブ選手権に移行するため終了となる第25回トヨタカップが行われ、その4日後には史上初の対戦となる『日本代表対ドイツ代表』(キリンチャレンジカップ)も行われました。

チャンピオンシップ時のピッチ
トヨタカップ時のピッチ

   その後もワールドカップ最終予選の壮行試合となる『日本代表対カザフスタン代表』(キリンチャレンジカップ)も、ここ横浜で2005年1月29日に開催されます。
   厳冬期に大きな試合が幾つも続きますが、芝生は大丈夫?と心配してくださる方も少なくないのではないでしょうか。そのご心配に報いるために、どのような事を行っているのかこっそり教えちゃいましょう。

芝生アップ

   そもそも12月から1月とは、芝生にとってどのような時期なのでしょう。夏芝は完全に休眠して茶色くなっています。ですから全く生育はありません。緑度を保つために9月下旬頃蒔いた冬芝は緑こそ保っていますが、元々15?25℃の時に旺盛な生育をみせる植物なので平均気温が5℃前後のこの時期ではほとんど生育しないと言っても良いでしょう。
    このような時期ですから、利用で荒れてしまった芝生は中々回復するまでに至らず、次々と利用されることでダメージが蓄積され衰退していってしまいます。
   その対策として我々がとる手段は、Vol.9でもお話した「補修」や「部分目砂」などがあります。しかし、今回はこれ以外の奥の手をこっそり教えましょう。
   みなさんは競技場が開催しているスタジアムツアーに来られたことはありますか?メインスタンド下の階段前でFIFAアンセムが流れ、いざフィールドへ。階段を上がっていくとまばゆい緑のフィールドが・・・。あれっ?真っ白?という体験をされた方もいらっしゃるのでは・・・。

メインスタンドから見た芝生
養生中の芝生

   これが秘密兵器その1『養生シート』なのです。何のためですって?目的は2つあります。
   1つ目は『保温』です。前記したようにこの時期の横浜の気温は5℃前後と低く、決して芝生が生育できる温度とは言い難いものがあります。そこで不織布やナイロン繊維を編み込んでできた薄いシートを掛けて地表面温度を上げるのです。これによって表面温度は2℃位高くなります。1週間から10日間位連続して敷設する場合が多いので、透過性のある不織布やビニール状の半透明シートを使用しています。
   試しに今の時期にご自宅の庭で新聞紙を1枚広げてみてください。1ヶ月後に除けてみるとこんなに違うものかと驚くことでしょう。
   2つめの目的は『霜除け』です。空気が乾燥してよく晴れた明け方には、放射冷却で気温が一気に低くなります。その時に土中の水分が地表面で氷結してできるのが霜です。皆さんも霜焼けはご存知だと思います。しかし芝生も霜焼けになることはあまり知られていないでしょう。赤く腫上がったり、赤切れになったりするわけではありませんが、どす黒く変色したり葉先がチリヂリになって枯れてしまったりするのです。霜の載った状態の芝生の上を歩くと氷を押し付けることになり、より被害が大きくなってしまいます。そこでそれらを防ぐためにも養生シートを掛けて、芝生に霜が載らないようにしているのです。これは競技場だけではなく、ゴルフ場などでも一般的に行われている方法です。

   秘密兵器その2は『着色』です。えっ!色を塗っているの!と思われる方も多いでしょう。しかしこれには意味があり、単に色を塗っている訳ではありません。
   皆さんはご自宅の床や愛車にワックスを掛けることがあると思います。簡単に言えば芝生に着色剤を散布するのもこれと同じような意味があります。雨やほこりなどの外的要因から守るためにワックス掛けをするように、芝生を霜害から守るために葉表面をコーティングしているのです。それだけであれば特に緑色である必要はありませんが、折角行う作業ですからより見栄えのするように緑色で着色しているのです。また色がついていることにより葉表面の熱吸収率も高くなり、養生シートを掛けるのと同じような効果も得られます。

養生シート掛け風景
着色剤散布風景

   このように色々な冬場ならではの作業を行うことによって、厳冬期でも見劣りしない芝生を提供するようにしているのです。今度はそういった点にも注意しながら観戦してみるのも楽しいのではないでしょうか。


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