スタッフブログ|日産スタジアム
芝生のとっておき話(6)
2004/03/10
 

   ?きれいな縞模様のできる理由?

   みなさん、こんにちは!
   寒い寒いと思っていましたが、早いものでもうJリーグ開幕の時期となりました。
   3月13日に横浜国際総合競技場で行われる横浜F・マリノスの開幕戦の相手は、浦和レッズです。大型補強で戦力が数段アップしたそうです。試合当日は、4万人以上の来場者が予想され、注目度の高さが伺えます。昨年完全優勝を飾った横浜F・マリノスがどんな戦いをみせてくれるか楽しみです。きっと今年も私たちの期待に応えてくれるのではないでしょうか。
   Jリーグの開幕は、競技場にとっても今シーズンのスタートです。その舞台となるのは、選手が最高のプレーができるように整備された「鮮やかな緑の芝生」です。芝生には、この緑を一層引き立ててくれる濃淡の鮮やかな縞模様がついています。そこで今回は、芝生の縞模様ができる理由についてお話をします。
   テレビゲームやボードゲームのサッカーでも、芝生は緑色でしかも縞模様がついていることが多いようです。縞模様は、それくらい皆さんに認知されているようです。しかし、どうして縞模様ができるのでしょうか?芝生の種類が違うから?異なった緑色で塗っているから?そんなふうに考える方は多いと思います。
   実は縞模様のできる理由は、「刈込み」にあります。正確に言えば刈込みを行うことによって付いてしまっているのです。それを見栄えよくするために、均等の幅で刈込んでいるのです。
   芝生を刈る機械には大きく分けてリール式とロータリー式の2種類があります。
リール式刈込み機とは、ねじれた刃数枚が円筒状についている回転刃が縦方向に回転し、受けとなる平らな刃(下刃)で挟み込むようにして芝生を刈る方法です。それに対してロータリー式刈込み機とは、ヘリコプターの羽根のように1枚の板刃を回転させてその勢いで刈込む方法です。

リール式回転刃
ロータリー式1枚刃

   横浜国際総合競技場や小机競技場で使用している芝生は、ティフトン419(暖地型)とペレニアルライグラス(寒地型)です。(Vol.2「芝生のとっておきの話(1)」)これらの芝生は細かい葉が密生しています。その上ペレニアルライグラスは非常に柔らかく水分量も多い性質をもっています。そのためロータリー式刈込み機械のような勢いで刈り取ろうとする機械を使用すると切り口が揃わなくなってしまい、後に茶色く変色して全体的な景観を損なうようになってしまいます。
   そこで「はさみ」のように両側からしっかり押さえて切るリール式の機械を使用して刈込みを行っているのです。
   ロータリー刃は、公園などで使われている野芝や高麗芝で多く使用されています。野芝や高麗芝はティフトンやペレニアルライグラスと比べて葉幅も広く、芝生自体がしっかりしているので、ロータリー刃できれいに刈込みすることができるのです。(リール刃で刈込むことも可能ですが、機械の消耗が激しいので使用しないことが多いです。)横浜国際総合競技場では、小机競技場の外周部分の野芝を刈込む時に使用しています。

リール刃による刈込み風景
ロータリー刃による刈込み風景

   では、本題の芝生のシマシマです。
   縞模様は、芝生の倒れ方によっておこります。芝生がどちらに寝ているかで光の当たり方が変わって違う色に見えているのです。その向きを決めているのが、リール式の刈込み機械なのです。
   リール式刈込み機械は、芝生を内側に巻き込みながら刈るため、手前側に芝生が寝るようになります。グランドの端まで行きUターンして反対側から同じように刈込んでくると、先ほどとは逆側に芝生が寝ていくのです。これを繰り返し行うことによって濃淡(縞模様)が生まれるのです。通常は芝刈り機の後方から芝の刈った後を見ると芝は淡くみえ、前方から見ると濃く見えます。
   また縞模様の幅は、芝刈り機の芝刈り幅を変えることによって自由に変えることができます。横浜国際総合競技場では、Jリーグや代表戦などの試合の時には4.5?6mで刈込みを行い、特に利用のないときには、刈込み機械が2台並んで刈れる3m前後で刈込んでいます。また、サッカーの試合時には、オフサイドの判断がしやすいようにメインスタンド側からバックスタンド側に刈ることが多いです。しかし、普段は芝生に寝癖がつかないように縦に刈ったり斜めに刈ったりもしています。

W杯日本戦の時の刈り幅6m
利用のないときの斜め刈り

   これらは各々競技場によって特色があり、違った思考で行っている部分でもあるので、その点に着目して観戦されるのも面白いのではないでしょうか。
   横浜国際総合競技場では、これからもプレーする選手たちが、よりプレーし易いようなコンディション作りはもちろんのこと、観戦に来られた人たちが見やすく、感動していただけるような舞台作りに焦点をおいていきたいと思います。