新横浜公園生きもの観察日記256

観察日 : 2017年 1月24日(火)

場 所 : 園内水路

生きもの: ビワコカタカイガラモドキ

記事作成: 横山大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

  年が明け、寒い日が続いていますが、皆さんはどのようにお過ごしでしょうか?私は、末端冷え性に悩まされる日々が続いています・・・。

 さて、新年1発目は、少し不思議な生きものに焦点を当ててみたいと思います。皆さんは、「カイガラムシ」という生きものをご存知でしょうか?ご存知でない方は、どのような生きものを想像するでしょうか。貝?虫?どっちつかずな名前ですが、この生きものは、植物に寄生して植物の師管液を吸って生活する、セミやカメムシに近いれっきとした半翅目の昆虫なのです。

 今回紹介するビワコカタカイガラモドキという種も、半翅目に分類されていますが、皆さんご存知のセミやカメムシとは異なる生活をしています。初齢幼虫に限っては脚があるものの、それ以降の幼虫、成虫は脚が消失してしまい、寄生植物であるアシやツルヨシの葉鞘裏に固着して動かないまま、その場で一生を過ごすのです。しかし、動かないままで越冬するため、冬場の小鳥たちにとっては貴重なタンパク源となっており、しばしばアシの葉鞘を器用に嘴で剥がし、捕食している場面を観察することができます。アシ原の方から「パキッ、パキッ」と枯れ草の茎を折るような音がしたら、小鳥がビワコカタカイガラモドキを捕食しているのかもしれません。ちなみに、名前に「ビワコ(琵琶湖)」と付いていますが、琵琶湖限定のレアな生きものではなく、関東を中心に広い範囲で見られます。

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ビワコカタカイガラモドキ(赤丸内)

 冬場の鳥のエサとして極めて重要なビワコカタカイガラモドキを含むカイガラムシ類ですが、知らず知らずのうちに良くも悪くも、我々人間の生活にも深く関わっています。日頃生活していて、気がついている方はどのくらいいるでしょうか?

 まず、悪い方面ですが、植物に寄生するため、農家の方々からすれば害虫となっており、果樹や野菜に損害を出すことがあります。次に良い方面では、カイガラムシの分泌物を原料に天然樹脂が作られ、レコード盤の材料になったり、ハム等の食品の着色料になったりしています。(虫の苦手な方、すみません。)そんな理由から、海外では、このカイガラムシを養殖しているというから驚きです。

  とにもかくにも、自然界では冬場の鳥たちの命をつなぎ、人間の世界ではところによっては大切に育てられ、我々の生活と密に関わっている、多くの生きものを支える小さな小さな変わった生きものを知ってもらえたでしょうか?カイガラムシの仲間は日本に約400種いると言われており、公園でも多くの種類を見ることができます。きれいなものも多くいます。暖かくなったら探しに行かれてみてはいかがでしょうか?

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ビワコカタカイガラモドキを見つけたアシ原   (アシの葉鞘を剥がすと見つかるかも?)

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