芝生観察日記 第116話

芝生観察日記の第百十六話です。

令和三年2月9日(火)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 2月4日、立春の日に例年より18日早く「春一番」が関東地方に吹きました。

 まだ氷点下となる朝もあり、体感的に春を感じる肌感覚ではありませんが、暦の上では春です。私たち人間が本格的に春を実感するのは桜が咲く頃なのでしょうが、芝生には一足先に春が訪れています。

 先週末の6日(土)、7日(日)で今年初めてのサッチング掛けとエアレーションを実施しました。

 まずは、8日ぶりに刈高15㍉で刈込みを行い、その後を追ってサッチングを掛けました。今回は、今年初のサッチングなので-3㎜(地際より3㎜上げた高さで刃が回転する設定)でサッチングリールを設定しました。

1_手刈り.jpg 今回はトランジションが目的というより、長い間養生シートで保温され、ライグラスが密度を増やして蒸れ気味だったので密度を梳くことと、表層に堆積したサッチを除去することを目的とする設定でした。今後、気温が上昇してライグラスの活性が更に上がっていけば±0㎜(地際ギリギリの高さで刃が回転する設定)でトランジションを目的として定期的に行うようになります。

2_サッチ.jpg

 判り辛いかもしれませんが、写真は回収されたサッチの状況です。蒸れた黄化葉が目立ちます。

 そして翌7日(日)には、十字タインを使ってエアレーションを行いました。

3_十字タイン.jpg 今回は久しぶりに十字タインを使いました。写真のように十字型のタインが芝生にそのまま十字に穴を空けます。いつも使う円柱状のムクタインより空隙率が大きく、穴が比較的長く残るのが特徴です。日産スタジアムではハイブリッド芝の基布による抵抗があるため、鋭利な剣状の刃を持つ十字タインで基布を確実に貫通するのに用います。

4_15ミリ.jpg

 写真のように、刈高15㎜ですが作業後にもしっかり穴が確認できます。芝生が覆い被さっているため十字には見えませんが。

5_ローラー.jpg

 エアレーション後は、ローラーで転圧して細かい不陸を修正します。機械のタイヤ跡や昨シーズンの利用でできた凸凹を整地して今シーズンの開幕に備えます。

6_液肥.jpg

 最後に液体の酸素供給剤や土壌改良剤など穴を空けたタイミングで効果が期待できる資材を散布して一連の作業は完了です。

 この後、再び養生シートを掛けて1週間程度養生します。

7_セレブレーション.jpg

 写真は厳冬期にも関わらず、冬越ししたセレブレーションが休眠せず緑度を維持しているのが確認できました。立春を過ぎたとは言え、さすがに萌芽するとは考え辛いので、長らくシートで保温されて霜にも当たっていないため元々耐寒性に優れた性質があるセレブレーションが、たまたま冬越しできる環境だったのでしょう。

 しかし、本来はしっかり休眠して春まで養分を蓄えておいて欲しいのですが、こうして緑度を維持したまま春を迎えてしまうと養分不足で体力を消費してトランジションに影響する不安があります。そのため冬の間も肥料を完全に切ることはできません。       

 まだ、芝生の根が動き出すには少し時間が掛かるので、今回の作業による効果が確認できるのはもう少し先になります。

 一雨ごとに気温が上がり、春が近づいていきます。今後は作業頻度も徐々に増えて行くので、また報告します。