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日産スタジアムのスポーツターフ

SPORTS TURF

芝生の種類

 横浜F・マリノスのホームスタジアムである日産スタジアムは、「Jリーグスタジアム基準」に則った施設、設備を備えていなければなりません。

 スタジアム基準の中には、ピッチに関わる規定もあり、以下の項目が定められています。

  • ピッチの芝生は、天然芝又はJリーグが認めた※ハイブリッド芝であること。
  • 平坦であること。常緑であること。水はけがよいこと。

※ハイブリッド芝:ピッチ全体が天然芝と5%以下の人工芝とを組み合わせたもの

(1)導入前に、ピッチ外でハイブリッド芝の実証実験を実施すること
(2)実証実験の結果をもとに、導入に関して理事会の承認を得ること

 以上のことから、日産スタジアムの建設段階で芝生に関する有識者の協力を得て「芝生フィールド整備検討委員会」が開催されました。その中で、日産スタジアムの立地条件や特殊な環境下で一年を通じて常緑を維持できる芝生として、暖地型芝生(夏芝)の「ティフトン419」に寒地型芝生(冬芝)のペレニアルライグラスをオーバーシード(追い蒔き)するウインターオーバーシード方式が採用されました。

 そもそも、日本においてJリーグスタジアム基準によりスポーツターフ用に通年緑化を実現するためには、大きく分けて2種類しかありません。

 一つ目は、日産スタジアムが採用したオーバーシード方式です。二つ目は、埼玉スタジアムや宮城、新潟スタジアムなど主に関東から北の地域で採用されている寒地型芝生(冬芝)を数種類混合して通年緑化を図る方式です。

 この通年緑化という概念は、海外から入ってきた技術ですが、古くはゴルフ場や阪神甲子園球場などで行われており、一般的にはあまり多くの方が目にする機会はありませんでした。

 今では当たり前にどこのスタジアムへ行っても一年中緑の芝生ピッチを見ることができますが、これにはJリーグが大きく貢献しています。前述の、Jリーグスタジアム基準をクリアされなければホームゲームが開催できないのですから、チームもスタジアムを所有している全国の自治体関係者も必死になってピッチの芝生を通年緑化するために尽力しました。

 日本では芝生と言えば、公園や日本庭園、ゴルフ場くらいしか頭に浮かばないと思いますが、日本在来の芝生というのは「高麗芝」や「野芝」しかありません。どちらも暖地型芝生(夏芝)に分類され、春から秋にかけては緑色ですが、晩秋から春先にかけては「休眠」のため退色して茶色くなります。ご自宅に芝生を張られている方は良く分かると思います。ちなみに、寒地型芝は枯れない限りは茶色くなることはなく、一年を通じて緑色の鮮やかな芝生になります。

 このような事情から、オーバーシード方式にするか、寒地型方式にするのかどのスタジアムも迷ったことと思います。しかし、いずれの方式も外国からの技術を導入しなければならず、我々も含めて芝生の管理者は試行錯誤の連続だったようです。

 話は戻りますが、日産スタジアムで採用されたティフトン419とペレニアルライグラスの性質を簡単に説明していきます。

ティフトン419(ハイブリッドバミューダグラス)
  • アメリカジョージア州のティフトンという町で開発・生産が始まり、1960年に販売が始まったと言われています。暖地型芝生で通称「夏芝」と呼ばれています。日本では、国立競技場や阪神甲子園球場などで使われており、最近では学校や幼稚園等の校庭や園庭の芝生化でも活躍している芝生です。

  • 休眠している茎と芽出しを始めている葉が混在している状態

  • 気温が25~35℃程度の範囲では生育が旺盛ですが、25℃以下になると生育は緩やかになり、10℃を切る気候になると休眠期に入って緑色から茶色へ退色します。
  • 夏芝と言われる由縁として、夏の暑さや強い日差し、乾燥に強いのが特徴です。しかし、競技場など屋根やスタンドの影響で芝生に影ができる環境では、本来の生育ができないこともあります。
  • 地表面を這う「ほふく茎」と土の中で伸びる「地下茎」という茎が四方八方に広がり、茎同士が絡み合って強い芝生を作ります。生育適温期には、サッカーやラグビーなどの傷口の回復が早いため「スポーツターフ」として競技場などで最も使われています。
ペレニアルライグラス
  • 和名は「ほそむぎ」で、原産はヨーロッパですが、もともとは牧草として重宝され、今では世界中で生産されています。日産スタジアムで使用しているペレニアルライグラスは、芝用として改良されたもので、産地はアメリカオレゴン州になります。寒地型芝生で通称「冬芝」と呼ばれています。
  • 気温が15~25℃程度の範囲では生育が旺盛ですが、暑さや湿度に弱く、25℃を超えると生育が鈍くなり、30℃を超える日が続いたり、夜間温度が下がらない熱帯夜が続くと著しく生育が低下して、衰退します。また、寒地型芝生とはいえ、気温が10℃を下回るとほとんど成長しません。
  • ほふく茎により横方向に伸びるティフトン419に対して、縦方向に伸びる叢状型の芝生になります。これは牧草をイメージしていただければ判りやすいと思います。
  • 冬季は休眠により生育は鈍りますが、緑色は退色することはありません。そのため、休眠して退色するティフトン419をお化粧するため毎年秋口に種を蒔いています。