スタッフブログ|日産スタジアム
芝生観察日記 第50話
2013/01/08
 

芝生観察日記の第五十話です。
平成25年1月7日(月)


芝生観察日記をご覧になっている皆さま、新年明けましておめでとうございます。
今年も、マリノスの選手を始め、日産スタジアムをご利用いただく皆さまに満足していただける芝生作りに精進して参りますので、今年もご理解とご協力をいただき、応援よろしくお願い致します。

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日産スタジアムの芝生管理作業は、今日から仕事初めとなります。
約2週間設置していた養生シートを捲り、平成25年初めての芝刈りを行いました。

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2月末までの予定で、陸上トラックの改修工事が入っているため芝生の利用はしばらくありません。目指すは3月のJリーグ開幕に向けて、昨年のクラブワールドカップで傷んだ部分の修復と合わせて全体的に状態を整えていきます。厳寒期になり、冬芝も勢い良く生育するという時季ではありませんが、手を尽くして開幕に備えます。

今年の目標は、多様化する芝生利用に対応できる強い芝生作りが第一ですが、懸念されるのは昨年の秋遅くまで夏芝が休眠せず、貯蔵養分の蓄積が不十分であるため冬芝から夏芝へのトラジッションがスムーズに切り替わるのか、この事を念頭に置いた管理作業を計画的に実施していきます。

今年は、芝生の状態や利用状況などを極力リアルタイムにお伝えしたいと思っています。


芝生観察日記の第四十九話です。
2012/12/27
 

芝生観察日記の第四十九話です。
平成24年12月27日(木)

平成24年も残り4日となりました。
日産スタジアムの利用は既に全日程を終えて、芝生管理作業も芝生に保温シートをかけて
我々よりも一足早く冬休みに入りました。
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さて、今年の目標だった我らがF・マリノスのJリーグ優勝は、終盤の追い上げも及ばず4位とい
う結果に終わりましたが、まだ天皇杯があります。
まずは29日の柏戦に勝って元旦にマリノスの選手達が天皇杯を掲げている姿を信じて今年の芝生観察日記を終わります。
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ちなみに、芝生とは関係ありませんが、現在スタジアムでは陸上トラックの公認検定を受けるため
の改修工事が進められています。来年2月末までの予定なので、その間はスタジアムの利用はもち
ろん、芝生の管理作業も殆どできない予定です。

追伸:お陰様で3年連続4回目のJリーグベストピッチ賞を受賞することができました。
色々あってJリーグアウォーズの場で受賞できなかったのが残念ですが、集計ミスに気付い人、それを公
表する英断をした人、様々な背景を思うと粛々と感謝することとします。いつもF・マリノスと日産スタジアム
を応援してくださる地元の方のブログで我々の思いが代弁されています。

http://blogs.yahoo.co.jp/shinyokokun

また、来年もよろしくお願いします。

芝生観察日記 第48話
2012/12/21
 

芝生観察日記の第四十八話です。
平成24年12月20日(木)


久しぶりの観察日記となりました。
前回から既に3か月が経過してしまいました。この間、作業的にはバーチカルカットや冬芝の追い播き(ウインターオーバーシード)、その後の養生管理など綴りたいネタは盛沢山でしたが、なかなか日記を作成するに至らず怠けてしまいました。これだけ空いてしまうと日記とは言い難い気もしますね。


さて、過日68,275人の観客が魅了されたクラブワールドカップジャパン2012が開催され、南米代表のSCコリンチャンスの優勝で幕を閉じました。
3万人とも言われる熱狂的なコリンチャンスのサポーターの応援でスタジアムの雰囲気は、とても中立国での開催とは思えない最高の盛り上がりでした。本場を感じる素晴らしい経験ができました。
 

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ワールドカップ決勝戦会場の芝生。FIFAを始め、出場するチームからも敬意を払われています。この事は大変名誉なことですが、その分プレッシャーも半端ではありません。
 

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2002年のワールドカップは、6月の開催ということで、冬芝から夏芝へ生育が移行する期間であることと、梅雨時季であるという管理上の課題はありましたが、基本的には芝生の生育最盛期だったので、セレモニー等による傷みの心配はあったものの、サッカー自体による傷みは回復が期待できました。しかし、このクラブワールドカップはJリーグのシーズンが終わり、冬に入ってベースである夏芝が休眠しており、冬芝も種を播いて2か月半という非常に繊細で、慎重を要する時期なので、期待に見合った状態を提供するために我々グリーンキーパーも管理には大変気を遣います。


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特に今年は、実質秋がなかったような季節感で、いきなり冬に突入した気象条件の中、夏芝と冬芝の2種類を使って常緑を維持している日産スタジアムでは、今年の秋はダラダラと気温の高い日が続き、いつになっても夏芝が休眠しなかったため、9月に播いた冬芝の種がなかなか生育せず、逆に夏芝が11月末でも緑に色づいている状態でした。この2種類の芝の生存競争が、不順な天候のため我々の想定通りにいかず、クラブ世界一を決める舞台造りに四苦八苦しました。


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上空からの空撮。そしてスタジアム内に張り巡らせられたワイヤーで移動するスパイダーカムによる頭上からの映像。スタジアムに来場された皆さんはもとより、映像を見て「あれっ」と感じられた方も多いのではないでしょうか。
写真では判り難いのですが、緑の芝生の間に見える茶色い部分は、芝が枯れているのではないのです。芝生のコンディションは、12月という季節と今年の天候を考慮すると上出来でした。でも、11月末まで緑色だった夏芝も大会期間中、急激に気温が低下して、氷点下が続いた準決勝から決勝戦の頃に夏芝はすっかり休眠に入り、一気に茶色く退色してしまいました。
冬芝の濃い緑色に茶色い夏芝が霜降りの斑模様になって醜い状態でした。
芝生は生きものです。こればかりは我々の力ではどうにもできませんでした。ちなみに今年は、この大会を想定して冬芝の播種量を例年よりも1平方メートルあたり10g多く播き、最善は尽くしたのですが結果として見映えが良くなく不本意でした。
今年は、昨年よりも1試合多く、4試合の他に8回の公式練習が行われました。芝生はゴール前を中心に局所的に傷みました。試合に影響が出るほどではありませんが、映像に映る剥げたゴール前は我々的に納得がいかないので、試合の合間を縫って適宜張替えを行いました。厳冬の中、連日、早朝から夜遅くまで作業してくれたメンテナンススタッフには感謝の気持ちでいっぱいです。


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決勝戦の後、最後のスタッフミーティングでFIFAのジェネラルコーディネーター(大会運営の総責任者:通称GC)から『素晴らしいコンディションを提供してくれてありがとう。』
この言葉に励まされ、達成感と共に心身が癒されて日本での最後になるかもしれないクラブワールドカップが終了しました。


芝生観察日記 第47話
2012/09/10
 

芝生観察日記の第四十七話です。
平成24年9月8日(土)

永ちゃんのコンサートから丁度一週間が経過しました。
日中こそ30度を超えて汗ばむ陽気が続いているものの、ゲリラ豪雨などまとまった降雨もあって、8月中の乾燥した猛暑が嘘のように朝夕は比較的過ごし易くなりました。秋ですね。。。
連日、散水作業に追われていましたが、芝生にはやはり自然の恵みである雨が一番潤うのです。
日中は暑く、朝夕に雨が降る天候によってコンサートで黄変した芝生も順調に回復してきています。
しかし、今朝芝生を見ていたら病気の菌糸を発見しちゃいました。
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写真の円内にクモの巣のような菌糸が発生しています。顕微鏡で菌糸を調べないと正確には診断できませんが、これは恐らく「ダラースポット」と言われる病気の兆候です。
この病気、初期症状がアメリカの1ドル硬貨大に発生するため、この病名が付いたようです。
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芝生に発生する病気も人間が感染する病気と同様に、何もしなければどんどん拡大していきます。
芝生の病気の場合は、主に人の足(靴)や芝刈り機等の作業機械に付着して感染していきます。
上下の写真でその伝染状態を示していますが、ブログの写真で判るか微妙です。
発生の原因は、肥料切れや過度の湿気等です。今回の原因は、コンサート時のテラプラス(芝生保護材)敷設による蒸れと日照不足によるストレス等が重なって誘発したものと想われます。
この病気、写真では菌糸しか見えませんが茎の部分は既に茶褐色に枯れ始めています。手を打たないと、あっという間に一面に拡がるため近日中に殺菌剤で感染を止めます。
季節の変わり目は、人間も芝生も体調管理に注意が必要です。皆さんも体をご自愛ください。

芝生観察日記 第46話
2012/09/03
 

芝生観察日記の第四十六話です。
平成24年9月2日(日)

昨夜、一夜限りの矢沢永吉40周年記念コンサート「BLUE SKY」が開催されました。
日産スタジアムは65,000人の永ちゃんファンで埋め尽くされて大いに盛り上がりました。夢の舞台に酔いしれた永ちゃんファンの皆さん本当にお疲れさまでした。
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さて、我々グリーンキーパーの気になるところは芝生です。一夜限りということもあってアリーナ席となった芝生を保護するテラプラスの敷設時間が、2日間コンサートを開催するときに比べ約半分の時間だったので、芝生の黄変も比較的軽傷でした。
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昨日は、長く続いた厳しい暑さも降雨と曇天で気温が下がり、芝生には幸いな天気となりました。
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芝生の状態は、全治7日と診断しました。しかし、芝生は生きています。日毎に日照時間も短くなってきているため、回復には今後の天候が鍵を握ります。それでも、15日のJリーグ、浦和戦は大事な一戦です。万全を期してマリノスの足元を支えます。

芝生観察日記 第45話
2012/08/31
 

芝生観察日記の第四十五話です。
平成24年8月29日(水)

厳しい残暑が続いています。
8月ももう少しで終わりですが、日産スタジアムの夏はまだ終わりません。
9月1日に予定されている矢沢永吉さんのコンサート開催に向けて、昼夜を問わず設営作業が行われています。
日産スタジアムの芝生ピッチは、夏芝と冬芝を併用しています。猛暑日が続いている今年の夏は、夏芝にとっては願ってもない天気のようですが、実はそうでもありません。

これまでの期間で、正直言って夏芝の仕上がり状態は、我々グリーンキーパーの思う通りに行っていないのです。

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原因は今年の春から夏にかけての天候が影響しています。
夏芝が動き出す4月から5月の日照時間が少なく、雨が多かったこと。例年は蒸し暑く冬芝が衰退し易い 梅雨入り後の天気が、予想外に爽やかだったこと。この2点が主に影響して冬芝がなかなか枯れずに残ってしまい、夏芝の勢いが出ませんでした。
そのため、下の写真のように芝は薄い部分が所々に見られます。これは冬芝が衰退して枯れた後のすき間です。我々の予想では今回のコンサート前までに全面夏芝で覆っていることを目標に管理してきたので、目標を達成できず少し残念です。

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幸い、残暑はまだ続くようなので、コンサート後の回復を含めて、9/15のJリーグには万全の状態にしなければなりません。芝生が薄い部分に夏芝の匍匐茎が一生懸命伸びているので、我々も管理作業をしっかり進めて強い芝生に育て上げます。
コンサート後の状況はまた綴ります。

芝生観察日記 第44話
2012/05/27
 

平成24年5月26日(土)

今季初めてエアレーションを行いました。
専門用語でいうところのコア抜きです。コア抜きのエアレーションとは、中空パイプで芝生を根こそぎ抜き取る作業です。
芝生を抜き取る事で生まれた土壌の空間によって、排水性の向上や酸素供給が促進されて芝生の根が元気になります。

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今年は春先から天候が不安定で、例年より雨が多く、気温も低めです。そのため夏芝(ティフトン419)の動きがやや遅れ気味です。逆に、冬芝(ペレニアルライグラス)は一時期病気が出たりして衰退傾向になりましたが、今はまた元気です。このような、天候や2種類の芝生のせめぎ合いに加えて今年は5月に初めてのコンサートが開催された事などを考慮してエアレーションも例年よりやや遅めの実施です。

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抜き取られた芝片(コア:core)です。根の動きはまだ鈍いようですが、しっかりとしたコアが抜けました。だいたい9cm位の長さ、太さは12mmということで、一見すると虫の大群のようで少しグロテスクですよね。

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コアはスチールマットで芝片と砂に分離するように擦り込みます。芝生の表面に残った芝片だけスイーパーで回収し、一連の作業は完了です。

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作業完了後の芝生です。ちどり状に綺麗に穴が空きました。この時季のエアレーションの目的は前記した以外に、排水性が向上し、空気が入り易くなることで土壌が乾燥し易くなり、冬芝の衰退に拍車をかけるトランジッション(冬芝から夏芝への切り替え)の意味合いもあります。また、穴の中及びその周辺に陽光が差し込むようになり夏芝(ティフトン419)の芽出しを促進します。
このように良い事尽くめのようなエアレーション作業ですが、同時にリスクも伴います。それは、穴を空けることで芝生の根が一時的に切られて芝生にストレスを掛けます。また、排水性が向上する反面で乾燥し易くなり、乾燥害のようなストレスも発生します。
エアレーションは、実施するタイミングが大切です。毎年、日々、芝生の顔色を見ながらその実施時期を見極めています。

芝生観察日記 第43話
2012/05/18
 

平成24年5月18日(金)

5月12日、13日の二日間「LArc en Ciel」のライブコンサートが開催されました。
両日とも68,000人のお客様でスタジアムは埋め尽くされ、会場内はこんな風景でした。

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5月に日産スタジアムでライブコンサートを開催するのは初めてです。これまで何回もライブコンサートを経験していますが、5月の気候で芝生にどれだけ影響が出るか未知数です。


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上の写真はコンサート前の状況です。冬芝から夏芝への切り替え中であるため低めに刈込んでいるのでやや緑が淡く見えます。
でも、状態は悪くありません。


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ハラハラドキドキの2日間でしたが、芝生の上に被せるテラプラスという保護材を約55時間設置し、撤去した状況がこんな感じです。
テラプラスの円形の足跡がくっきりと残っていますが、結果的には幸い想定内という感じでしょうか。
明日にはJリーグが開催されます。選手には常に最高の舞台でプレーしてもらいたい。
これが我々グリーンキーパーの使命でありプライドです。

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コンサートから5日が経過しました。上の写真は今朝の状況です。まだ完全とは言えませんがなんとか明日のJリーグには支障がない程度まで回復しました。
4月28日のヴィッセル神戸戦で今季初勝利を勝ち取り、現在破竹の勢いで4連勝(カップ戦を入れると5連勝)中のF・マリノス。
この勢いを芝生のせいで止めるわけにはいきません。

芝生観察日記 第42話
2012/03/15
 

芝生観察日記の第四十二話です。
平成24年3月15日(木)

いよいよ20年目のJリーグが開幕しました。
我らが横浜F・マリノスも17日(土)にベガルタ仙台とホームでの開幕戦を迎えます。
今年の冬は記録的に寒さが厳しく、冬季間は保温のためシートが掛かっている日が多く、なかなかこの観察日記で芝生の状態をお知らせできず、開幕直前レポートとなってしまいました。
 今日の午前中に開幕前恒例のチーム練習が行われました。目的は、試合前のフィールド状態の確認です。ホームチームとして当然のアドバンテージです。
 思えば、昨年は開幕前の練習を終えた午後に東日本大震災が起きました。選手が帰った後だった事が不幸中の幸いでした。
 芝生は、ここ10日位でみるみる良くなって、何とか開幕に間に合ったとホッとしています。監督からも太鼓判をいただきました。
 試合当日、17日の天気は雨予報です。また今年もかと、嘆き節とならず8年ぶりの優勝をぶっちぎりで勝ち取って欲しいものです。
 17日は、2011年度のJリーグベストピッチ賞の受賞式が行われます。昨年度は、4会場が受賞しました。こちらも今年はマリノス同様ぶっちぎりで連続受賞を目指します。
 今年のJリーグアウォーズは、横浜アリーナで開催。横浜F・マリノスが優勝。そして日産スタジアムがベストピッチ賞の横浜尽くしで終わりたいものです。ちょっと気が早いですかね。
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芝生観察日記 第41話
2012/01/09
 

芝生観察日記の第四十一話です。
平成24年1月5日

あけましておめでとうございます。
日産スタジアムも今年で開場14年目を迎えます。
昨年はお陰さまで二年連続のベストピッチ賞を受賞することができ、知人やスタジアムを去っていった
先輩諸氏から届いた年賀状の多くに「芝生は良くて当たり前、それでも連続受賞は素晴らしい」と、一言
評価を加えていただいたことで今年一年またがんばろうという励みとなりました。
毎年同じ想いですが、F・マリノスのリーグ優勝があってこそ、本当のホームスタジアムの芝生
の評価だと考えています。三年連続のベストピッチ賞は当然我々グリーンキーパーの目標ですが、まずは
F・マリノスの優勝をアシストできる芝生を作っていきたいと思います。
さて、新年最初の芝生観察日記。今日現在芝生にはまだFIFAクラブワールドカップTM(FCWC)
で疲れ切った芝生を養生するためにシートが掛かっているので現在の芝生の報告はできません。そこで、3年ぶり
に日本開催となった12月のFCWCの舞台裏についてご紹介しましょう。

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 写真は、ゴールの設置作業風景です。作業自体はJリーグの準備と変わらないいつもの光景です
が、いつもと何か違うのが解りますか。答えはゴールネットを後方から吊るサブポールの色です。
 2002年のワールドカップから、このネットを吊るタイプのゴールを使用してきました。
ワールドカップ前にFIFAから、サブポールの色についてゴールポストと選手が見間違わない色という
ことで黒に指定されて今日の黒いサブポールが定着していました。ところが、今回のFCWCでは大会1週間
前にFIFA(国際サッカー連盟)のゼネラルコーディネーター(GC)が視察に来て、ゴールポストを確認したいということで
倉庫にあるゴールセットを見せたところ、2008年のワールドカップ南アフリカ大会からサブポールの色が
FIFAブルーに統一されているのだと言い出し、既にこの色がスタンダードであるとのこと。同行した日本
サッカー協会の方も知らなかった様子で、大会1週間前にそれを言うかと思いつつも、業者さんに協力して
もらい即席でゴールポストを塗り、保護カバーも同色の作成を依頼しました。 
 さすがFIFA様。やってくれるよなと嘆き、先行き不安に思いつつも何とかオーダーに応えて大会に臨みました。
 準備が整ったのは実に準決勝戦の2日前でした。
ということで、今年からはこのFIFAブルーのサブポールとなります。

スパイダーカム.jpg
 次は、「スパイダーカム」の設置作業風景です。クモのようにフィールド上空を縦横無尽に動き
回って臨場感ある映像でみなさんも感動したことと思いますがスタジアムの4隅から吊られたワ
イヤーで操られるカメラは正にプロフェッショナルな技でした。  
でも、このカメラで上空から撮られると普段はみなさんに判らない芝生の粗まで鮮明に写
しだしてくれるので、我々グリーンキーパーには厄介なカメラでした。
 聞くところによるとこのカメラ、2005年のアカデミー賞テクニカル部門でオスカー賞
を受賞しているとのことで、その技術はさすワールドクラスという感じでした。
富士山リハ.jpg
 次は、決勝戦前に行われるクロージングセレモニーのリハーサル風景です。2002年のワールドカップの
時より少々小ぶりですが、このセレモニーに約100人のスタッフが芝生内を右往左往しました。
 我々グリーンキーパーとしては、大事な試合の前に正直この手のセレモニーは丹精籠めて作った芝生が荒れて、綺麗なゼブラ模様もぼやけてしまうので避けて欲しいところですが、これも含めてワールドカップなのだと自分
自身に言い聞かせています。それでも、芝生を守るために可能な限りの対策を講じます。それが、リハーサル
時のシート養生です。本来は保温や霜避けのために設置するシートをセレモニーのリハーサル時に設置すること
で芝生を擦り切れから護り、人の足跡を緩和させます。我々には効果が有ると思っていますが、結果としては
、先ほどの「スパイダーカム」で上空から映された映像では足跡が結構目立ちました。これが判るのは我々だけ
かもしれませんが。
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PKマークとゴール前の芝剥ぎ後の状況 
ペナルティーポイント張替え後.jpg
PKマークとゴール前の芝張り後の状況

 最後は、芝生です。今回のFCWCは豊田スタジアムと日産スタジアム(横浜国際総合競技場)
の2会場で開催されました。日産スタジアムは決勝戦を始め3試合。豊田スタジアムでは5試合が
行われましたが、短期間でこれだけ国際試合をこなすと芝生には結構厳しい結果をもたらします。
 国際試合は、試合前日に翌日試合を行うチームが会場に慣れる目的で、必ず公式練習を行います。
時間は各チーム1時間ずつですが、ある意味試合よりも芝生に及ぼす影響は甚大です。傷む場所は
決まっています。
 今大会も8試合の内2試合がPK戦となりましたが、どのチームも限られた時間
の中で、ペナルティーキックの練習に当てる時間が長く、当然局所的に踏圧や擦り切れが嵩むPK
マークやゴールエリア付近の芝生がほぼ壊滅します。
 丹精込めて育てた芝生ですが、試合に影響する状態では張り替える以外に選択肢はありません。
3位決定戦と決勝戦で試合を行う4チームの公式練習が終わった20時過ぎから、両ゴール前とPK
マーク部分の芝生を張替えました。気温は5℃。時間と共に気温は下がり、芝生の張替えが終わ
った23時過ぎには芝生表面の露が凍り始める状況でした。予想外に北側のゴール前が傷んだため
張替え面積が拡大したので時間的にかなり厳しい作業となりましたが、何とか間に合いました。
 試合当日、芝生の張替え作業には自信はありましたが、PK戦となった3位決定戦の時は芝生が捲
れないかとドキドキしながら試合を注視していました。
 幸い我々が張り替えた芝生は、その後の決勝戦でも問題なく素晴らしい決勝戦の舞台であったと
自画自賛のうちに大会は幕を閉じました。
 昨年末発表された2012年のザックJAPANのスケジュールを見ると、残念ながら日産スタジアム
での日本代表戦は予定されていないようです。
FCWCも日本での開催は決まっているものの横浜で開催されるかは定かではありません。
 ということで、今年はF・マリノスのリーグ優勝をアシストすることが最大のミッションではありますが
、市民のみなさんにスタジアムの芝生を体感していただける機会を増やすことも我々の大きなミッション
だと考えていますので2012年の日産スタジアムに乞うご期待。  
 今年も日産スタジアムをよろしくお願いします。


芝生観察日記第四十話
2011/12/07
 

芝生観察日記の第四十話です。
平成23年12月 6日

 6月8日以来、約半年ぶりに久々の芝生観察日記です。
 12月3日にJリーグの最終戦、横浜F・マリノス対鹿島アントラーズ戦が開催されました。
 今年も寒暖の差が激しく、芝生を管理する上では難しい一年でしたが無事長いリーグ戦を終えてホッと
一息といった感じです。そんな中、昨日「Jリーグアォーズ」が4年ぶりに地元「横浜アリーナ」で開催されました。
 2年連続受賞の期待が膨らむ「Jリーグベストピッチ賞」の発表もあって、我々グリーンキーパーにとっても毎年気になるイベントです。
 結果は、お陰さまで2年連続、3回目の栄誉をいただくことができました。芝生管理スタッフを始め、スタジアム関係者の皆様に感謝です。
今年度は4会場が受賞しましたが、評価をする側の方々は苦労されたことでしょう。芝生管理のレベルが年々上がっていくことは我々にとっても良い刺激となります。
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 写真は今日。ベストピッチ賞も頂き、一年間お疲れさまと気が抜けてしまいそうな時期ですが、我々
の目標は既に次に向かっています。そうです、FIFAクラブワールドカップが3年ぶりに日本に
帰ってきます。もちろん決勝戦は、2002年ワールドカップの決勝戦会場である、ここ日産スタ
ジアム(FIFAの大会期間中は「横浜国際総合競技場」に戻ります)です。
 今は、決戦を控えてJリーグで傷んだ芝生はシート養生中です。手前だけ一部シートが捲られてい
ますが雑草の除草作業中です。こういった地味な作業がベストピッチを支えてくれています。
現在スタジアムのホームページは改修中のため、この日記が掲載されるのは少し先かもしれません
が、普段から応援してくれている地元の方のブログ(http://blogs.yahoo.co.jp/shinyokokun)に
一足先に祝福のメッセージが掲載されていました。本当に嬉しいです。という感謝の気持ちと共に
、何時もスタジアムのことを応援してくれるサポーターが身近にいるのだという身が引きしまる思
いです。
 横浜国際総合競技場。これからも、その名の通り世界に誇れる芝生を作っていきます。  

芝生観察日記の 第38話
2011/06/03
 

芝生観察日記の第三十八話です。
平成23年6月 3日

 いよいよ来週6月7日(火)に「キリンカップサッカー2011」日本代表対チェコ代表戦
が開催されます。
 日産スタジアムでの日本代表戦は、昨年9月4日の「キリンチャレンジカップ2010」
のペルー戦以来となります。
そして、ザッケローニJAPANが当スタジアムに初登場となります。
  サッカーは、監督の戦術によって芝生に求められる状態が変わります。
  これまでもトルシエ監督、ジーコ監督、オシム監督、岡田監督とそれぞれ当日の状態
につい  て色々なオーダーがありましたが、果たしてザッケローニ監督は日産スタジア
ムの芝生にどういうオーダーをだしてくるのか楽しみです。とはいえ、出来ることと出来な
いことがありますので我々グリーンキーパーとして一番良いと考える状態を提供したいと
思っています。
6月7日は、例年ならば梅雨入り前後の微妙な季節ですが、既に予想外の梅雨入りに
よって我々が想定していた状態と少しずれており、軌道修正中です。
写真は、梅雨の中休みとなった今日撮ったものですが、綺麗なゼブラ模様が出ています。
冬芝から夏芝に切り替える真っ最中であるため、雨が降っている梅雨空であれば問題は
ありませんが、今日のように降雨後に晴れて急激に気温が上昇する状況は、冬芝にとっては
病気が出易くなるため厳しい季節です。しかし、何があってもベストな状態に仕上げていきます。

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日本代表チームには、先日のペルー戦でのうっぷんを是非晴らすような試合をして、優勝を
勝ち取ってもらいたいと思います。「がんばれニッポン!」

芝生観察日記の 第37話
2011/05/07
 

平成23年4月22日
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 バケツが並んでいます。芝生観察日記でバケツの写真これ如何に。と、思いますよね。
 実は、これ雑草の除草作業風景なのですが、左側の写真は休憩中でみな自分が抜い
ている場所が解らなくならないようにバケツを目印に置いていたのです。
 今回はいつもより人数を増員して実施中です。

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 獲物は、芝生の大敵「スズメノカタビラ」です。上の写真の中にあるのが判りますか。
みなさんが見分け付かなくても不思議ではありません。ゴルフ場やグラウンドでは雑
草と嫌われますが、れっきとした芝の仲間です。
 詳しくは「芝生観察日記3」を読んでみてください。
この雑草、ゴルフ場や家庭の庭などでは除草剤を使って防いでいますが、ここ日産スタ
ジアムは新横浜公園内に設置されているため除草剤には頼れません。なので、通常は機
械作業や力仕事が多い芝生管理ですが、除草ばかりはそうもいきません。大事な芝生ま
で抜き取ってしまうので慎重に人海戦術です。
 除草は忍耐強さが要求される作業です。そのため、今回は造園屋さんにお願いして公
園などで除草に慣れているおかあさん達を大量増員してもらいました。このおかあさん
達が凄いんです。
 世間話をしながら楽しそうに草を抜いてくれます。笑い声と共に楽しそうに除草をし
てくれている姿は何となく心和らぐのどかな光景でした。


芝生観察日記(36)
2011/04/13
 

芝生観察日記の第三十六話です。
平成23年4月 13日

このたびの震災により被害を受けられた多くの皆様に心からお見舞い申し上げます。
一日も早い復興をお祈り致します。


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 第三十四話以来約2ヵ月ぶりの芝生観察日記です。
第三十五話は、マリノスの今季ホーム開幕戦を2日後に控えた震災当日に作成していましたが、最後まで書きあげることができませんでした。なので、欠番とさせてください。
 震災により被災したスタジアムやグラウンドが数多くあると聞いていますが、日産スタジアムの影響は少なく、ありがたいことですが複雑な心境です。
 被災地から遠く離れた日産スタジアムですが、自粛を促す世相の中で色々と戸惑いながら、グリーンキーパーの私たちに今できることは何だろう?と、日々考えてきました。
 芝生を良い状態に維持するためには色々な場面で電気や燃料が使われています。今まで当たり前のように無意識に作業を行ってきましたが今回の震災で色々と考えることができました。
 Jリーグが延期されたので、作業の見直しを行い芝生が枯れない程度に管理してきました。これで、どれだけの電気や燃料が削減できたか解りませんが、みんなが同じような意識で取り組めば必ず大きな力になると信じています。
 私たちが持っている経験と知識を活かして今私たちにできることを今後の管理作業にも反映させて行こうと思います。
Jリーグは、ようやく23日から再開することになりました。日産スタジアムでは29日のマリノス対清水エスパルス戦から再開となります。
 芝生は約2ヵ月のお休みをもらったので万全な状態です。
 舞台は整えました。後は、両チームの選手が最高の試合をしてくれること。それが、みんなの元気に繋がると願っています。

芝生観察日記 第34話
2011/02/09
 

芝生観察日記の第三十四話です。
平成23年2月4日

土中水分計の交換が終わりました。

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ようやく探し出した最後の1箇所に新しい土中水分計が接続されました。

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日も暮れて、薄暗くなったフィールドで、最後の芝生を埋め戻します。


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予定の工期内で終わらないかと心配しましたが、ラストスパートで
何とか全ての作業を終えました。上の写真は、埋め戻した後の状態
ですが何処だか判りますか。
ここに3箇所の埋め戻し跡があります。ちなみに今回11箇所の計
測器を交換するのに28箇所の芝生を切りました。その確立約4分の1です。
凡そ10年後に交換する時は100%を目指します。

芝生観察日記 第33話
2011/02/03
 

芝生観察日記の第三十三話です。
平成23年2月3日

 2011年も早いものでもう1カ月が過ぎました。大寒は過ぎましたが相変わらず朝夕の冷え込みが厳しい毎日です。
 この時季、芝生は殆ど伸びません。
我々が行う芝生の作業は、刈込みを10日に一度程度行う他、液体肥料を施す以外は芝生にシートを掛けて養生しています。
 でも、今年で開場13年目を迎えるこの冬は、日産スタジアムの芝生にとって大事な作業を行っています。いや、手術と言っても良いかもしれません。
13年前の3月、都心では珍しい降雪となり公共交通機関が麻痺して当日開催が予定されていた「サッカーダイナスティーカップ 日本代表対韓国代表」の開催可否を迷うほどでしたが、芝生フィールドの上は濃緑な緑色の芝生が輝いていました。
 恐らく他所のスタジアムだったら中止か無理矢理除雪して開催するかの選択だったと思います。しかし、日産スタジアムでは交通機関その他の遅れはあったものの試合は無事開催することができました。
 この原動力となったのが、芝生の下の土中30?に埋設されたフィールドアンダーヒーティングシステムです。
 このシステムは、過去の気象データーと現在の気温、地温、湿度等からコンピューターが自動解析し、設定された地温を予測して土壌温度をコントロールするものです。  そして、この解析データーの一つである土中水分を測定する計器が約8000?のフィールドに12個埋設されていますが、設置してから既に14年近く経過しているため年々精度が落ちて、制御精度にも影響が出ているので、初めて交換することにしました。 

     DSCF9114.jpg        DSCF9110.jpg
<金属探知機で土中水分計の埋設箇所を探します> <ようやく掘り中てたセンサーを交換します> 

 かなり高性能な金属探知機を使って地中に埋設された土中水分計の在りかを探り当てますが、これがなかなか見つかりません。
 業者さんも苦笑いどころか、冷や汗ものです。何せ、1箇所中てるのに芝生面に直径30?ほどの穴を3?4箇所位ずつ空けます。日産スタジアムの芝生をここまで深く掘った経験は私たちも初体験です。まだ4個所未発件ですが、作業日は後1日。果たして終わるのでしょうか。
 段々、笑えない状況となってきましたが、終わったらまた報告します。 

芝生観察日記の第三十二話です。
2011/01/07
 

芝生観察日記の第三十二話です。
平成23年1月5日

 あけましておめでとうございます。
年末21日から養生シートをかけていましたが、今日15日ぶりに剥がしました。
 年末年始は各地で大雪が降るなど大荒れな一年のスタートとなりました。幸い横浜を含む関東の平野部では乾燥した冬晴れが続き穏やかな正月を迎えることができました。
 それでも氷点下の朝が続く厳しい冷え込みとなり年末にシートを掛ける前には辛うじて緑度を保っていた夏芝も完全に退色して、冬芝と夏芝の斑模様が気になります。さすがの冬芝も氷点下が続くと生育が止まり、16日ぶりに刈込みを行いましたがゼブラの縞模様も鮮やかではなく、刈カスは殆ど出ない状態です。

DSCF9019.jpg DSCF9024.jpg

これからしばらくは夏芝には十分休養を取ってもらい、春の芽出しに備えてもらいます。
この間にグラウンドの緑を保つのは冬芝です。今現在は無理に管理作業などで刺激を与えませんがJリーグの開幕に向けて少しずつ手を入れていきます。
 今日シートは一時的に剥がしましたが、夕方には再びシートを掛けて霜避けです。アンダーヒーティングの力も少し借りて春の訪れを待ちます。
 今日からまた夢の舞台作りが始まります。

芝生観察日記 第31話
2010/12/28
 

芝生観察日記の第三十一話です。
平成22年12月27日

 今年の芝生管理作業は、散水で締めくくりです。快晴の青空の下、スプリンクラーから放たれる
水に虹が掛かっているのが判りますか。のどかな春のような光景ですが、写真を撮っている位置は
日陰で気温は2℃です。水溜りの水は凍りそうな状態です。
 つい先日まで記録的な猛暑が話題になっていた気がしますが、クリスマスを過ぎてからようやく
冬らしい冷え込みで寒さが厳しくなってきました。今年の芝生利用は12日の「日産スタジアムエ
ンジョイサッカー大会」をもって既に終了し、来年に向けて養生シートを掛けて冬仕度です。
12月27日現在、今月の総雨量が145?に達しています。これは2006年の158?に次ぐ雨量で、
12月としてはかなり多く、一年を通じておかしな天候が続き、芝生管理を行う上で難しい一年で
した。

来年はうさぎ年。どんな天候で、芝生はどんな生育をするのか不安と期待は何年経っても消えません。でも、それが新鮮で毎年気持ちを新たに迎えることができます。
  来年の芝生利用のスタートは年明け19日の「神奈川県幼稚園サッカー大会」です。広いグラウンド全体にサッカー小僧達が楽しそうに駆け回る恒例の大会となりました。日産スタジアムの芝生はJリーグを始めとするトップレベルの舞台であると共に幼稚園や小学生のサッカー小僧達の夢の舞台でもあります。ここでプレーしたサッカー小僧達が将来Jリーガーや日本代表選手として日産スタジアムの芝生の上に立つ日が来るのを想像すると我々の夢も膨らみます。
  来年のJリーグは、ここ日産スタジアムで開催されるゼロックススーパーカップから始まります。ザックJAPANも6月のキリンカップで初登場します。2年間UAE(アラブ首長国連邦)で開催されたFIFAクラブワールドカップも来年は日本で開催することが決定しています。日産スタジアムで試合が行われるかは決まっていませんが楽しみな一年になりそうです。
 次回は年明けにシートを剥がした状況を報告します。
 みなさん良いお年をお迎えください。

芝生観察日記 29話
2010/12/08
 

芝生観察日記の第二十九話です。
平成22年12月6日

  日毎に寒さが厳しくなってきました。本格的な冬の到来に合わせて皆さんも上着の枚数が一枚、二枚と多くなってきたのではないでしょうか。
  芝生もシートを掛けて冬仕度です。

               

 ビニール製で網目状に編み込まれたシートは蒸れて芝生が弱らないように風通しが良く、芝生の生育には欠かせない太陽の光もシートを掛けない状態の約60%確保することができます。このシートの効果により表面温度が約1?2℃度上昇します。
シートを掛ける目的は表面温度の上昇と霜除けです。農作物同様に芝生も強い霜にあたると葉が焼けて、緑度の低下や葉先の縮れなどの症状を招くため、その予防です。

               


 シートを掛けておく期間は長くて2週間、短い時は一晩だけという日もあります。長く掛けていれば良いというものではありません。自然の風や太陽光に当たることも大事です。
  今シーズンのJリーグも全て終わりました。今シーズンの芝生の評価はといえば記録的な猛暑ではありましたが、まずまずだったと振り返ります。今年はサッカーのクラブワールドカップがないため寂しい12月となりますが、このシートで来春のJリーグ開幕に向けてた芝生作りを始めます。冬の間は全く太陽光が当たらない部分もあり、日産スタジアムの芝生にとっては厳しい生育期間となるので、どんな高級な肥料よりも、このシートが芝生に恵みを与えてくれます。

芝生観察日記 第28話
2010/11/19
 

芝生観察日記の第二十八話です。
平成22年11月12日

  冬芝が「分げつ」しました!!
  種を播いてから約1ヵ月半が経過しました。これまで1葉、2葉と種から発芽した1本の茎から出た葉の枚数を報告してきましたが、今度は初めに出た茎の生え際から新たな茎が出てきました。これを「分げつ」と呼びます。樹木では「ヒコバエ」と呼びますが、聞いたことありますか。
下の写真は2本の茎を採取していますが、左側は2本、右側は3本に分げつしているのが判りますか。
こうして1粒の種が10本、20本と増えて株状に芝生面(ターフ)を形成していきます。ただ、これも冬芝だけでターフを形成させるのであれば肥料と水をどんどんやって分げつを促しますが、日産スタジアムのように夏芝にオーバーシードする場合は、あまり大きな株になり過ぎては困ります。理由は、夏芝を覆うことで春になって夏芝の芽出しを邪魔するからです。大きな要因としては日差しを遮ることで夏芝の芽出しに必要な地温の上昇を抑制するからです。
日産スタジアムでの冬芝の位置付けはあくまでも冬の間、茶色く退色する夏芝のお化粧なので肥料や散水を抑えて必要以上に分げつさせません。
ただ、その年の天候に左右され、景観的な視点とコンディションの両方をクリアする育成管理はこれが絶対だという数値で示せるものではないので、何年やっても難しいと毎年しみじみ感じます。
果たして来春には何本に分げつしているでしょうか。

             

芝生観察日記 第27話
2010/11/04
 

芝生観察日記の第二十七話です。
平成22年10月31日

  季節外れの台風14号の接近は冷たい雨が70?程度降りましたが芝生への直接的な影響はありませんでした。人工地盤上に建てられた日産スタジアムは土壌の排水性が優れているため雨がいくら降っても心配することはありません。雨が降ることで心配なのは日照時間が少なくなることによる生育不良です。気温も低い日が続いているので、冬芝の生育が鈍いことも気がかりです。
  さて、10月22日(金)から24日(日)までの3日間陸上のジュニアオリンピックが開催されました。陸上にはウレタントラックの上を走る、飛ぶの他に、芝生グラウンドに向かって投げる「投てき競技」があります。下の写真は、投てき競技の円盤投げが行われている会場の全景です。

             

 今回の大会では「円盤投げ」の他、「ジャベリックスロー」と「砲丸投げ」といった投てき競技が行われましたが、下の写真はジャベリックスロー(写真左)と円盤投げ(写真右)の傷跡です。個々の傷は大きくはありませんが、一人の選手が何回も投げるので、器具の落下が集中する場所はたまりません。傷は砂を入れて埋め戻しておきますがサッカーの傷同様に直ぐには回復しません。
  日産スタジアムは総合競技場です。陸上競技も使用用途の柱の一つですので、会場として使っていただけるのはありがたいことです。ただ、意外に芝生には厳しい利用であるのも事実です。
著しい天候の変化を読みながら多くの利用に耐えうる芝生を育てる仕事。グリーンキーパーには気が休む暇はありません。   

   

芝生観察日記 第25話
2010/10/28
 

芝生観察日記の第二十五話です。
平成22年10月21日

 冬芝の4葉目が出始めました!!
 種を播いてから22日が経過しましたが、2?3日前から4葉目が出始めて、ようやく植物らしく見えてきました。幼稚園の年中さんといった感じでしょうか。
 これからの時季は、気温が段々下がって冬芝にとって良い気候になっていきます。ただ、スタジアムの屋根が芝生への日照を一部遮るので植物の生命線となる光合成に影響を与えます。そのため、普通のグラウンドの芝生よりも生育が鈍くなります。これが毎年のことながら悩みの種です。

             


3葉目の葉っぱが出始めた17日(日)にオーバーシード後初めてのJリーグが行われました。まだ、しっかりと根付いていない冬芝の状態が心配でしたが、終わってみれば心配したほどのダメージは残らず傷んだのは少しだけでホッとしています。それでも、プロレベルの選手が使うと下の写真のような傷が発生します。この時季の傷はなかなか回復しません。完全に傷口が埋まるのは夏芝が生育を始める来年の春以降ですが、それまでは砂で埋めて芝生の回復を待ちます。
  次の芝生利用は、22日から3日間行われる陸上のジュニアオリンピックです。「円盤投げ」や「ジャベリックスロー」といった投てき種目が芝生にダメージを残します。次回は、その状況を報告しますね。        

   

芝生観察日記 第24話
2010/10/22
 

芝生観察日記の第二十四話です。
平成22年10月16日

  冬芝の3葉目が出始めました!!
  種を播いてから17日が経過しましたが、2?3日前からようやく冬芝の葉が3枚出てきました。
  現在は種を播いた後の養生期間です。この芝生の上で最初にボールを蹴ることができる幸せ者は明日のJリーグで戦う横浜F・マリノスとヴィッセル神戸の選手達です。
  本当はもう少し養生期間が欲しいところですが、試合のスケジュールを変更するわけにはいきません。ようやく赤ちゃんから幼稚園の年少さんに上がったくらいの状態なので、激しく踏みつぶされると新芽を潰してしまうので周りの夏芝に支えてもらいながら頑張って生き残って欲しいと思います。

            

 葉っぱが3枚になるということは単純に3倍になるということです。それだけ芝生の密度が増えるわけですが、このまま5枚、6枚と限りなく増えていくわけではありません。5枚位までいくと古い葉っぱを自分でふるって新葉を出して循環します。上の写真を見て気付きましたか。まだ種の殻が付いています。この種の殻はやがて土壌微生物に分解され、ふるわれた古い葉っぱ同様に、芝生が自分で養分として吸収します。自然の中の循環機能。エコですね!下の写真(左側)は綺麗なゼブラ模様が付いた今日の様子です。右側は播種前の状況ですが、さすが冬芝です。我々グリーンキーパーが見ても美しいと感動します。これから気温が下がり、夏芝の生育が衰えてきます。そうなると冬芝の緑が一層濃くなっていきます。
この鮮やかなストライプは夏芝ではなかなか出ません。次回の報告は小学校入学位でしょうか。

 

芝生観察日記 第23話
2010/10/15
 

芝生観察日記の第二十三話です。
平成22年10月6日

  冬芝が発芽しました!!
  種を播いてから5日で冬芝が発芽しました。
  ベースとなる夏芝(バミューダグラス ティフトン419)の間からツンツンと針のように淡い新緑の芽が立ち上がっているのが判りますか。まだ芝生とは呼べない状態です。人間なら生まれたての赤ちゃんです。
  一人前の芝生になるのは来年の春ですが、夏芝のお化粧としては1か月くらいあれば綺麗なグラウンドになるでしょう。目安は一つの種から出た芽が、4枚目の葉を出した状態です。

             

それまでは大切に育てます。なにぶん赤ちゃんですから!
  そして今日から子育ての第一歩です。通常は人が機械に乗る芝刈り機を使いますが、これでは機械の重さで新芽を潰して生育を遅らせるため、最初は新芽に負荷をかけないように自走式芝刈り機を使います。約8,000平方メートルあるグラウンドを2台の芝刈り機で約2時間かけて刈ります。これが実に大変です。その距離およそ6万歩!子育ては大変です。

             

芝生観察日記第22話
2010/10/07
 

芝生観察日記の第二十二話です。
平成22年9月29日

冬芝の種を播きました!!
 記録的な猛暑や、3回のコンサートにも負けず耐えしのいだ夏芝(バミューダグラスのティフトン419)もそろそろ長期休暇の季節が近づいてきました。夏芝の長期休暇の詳しい話は、過去の「芝生のとっておき話」「芝生観察日記」を読み返してみてくださいね。とは言え、簡単に説明すると今は緑の絨毯(じゅうたん)ですが夏芝の休暇中は表面の葉が茶色く退色します。これを「休眠」と呼びますが、Jリーグのホームスタジアムである条件として、天然芝(人工芝ではない)であること、一年中常緑(退色しないで緑を維持)であることが規定されています。
  この条件をクリアする手段として冬の間、夏芝が退色したグラウンドを緑にお化粧するために冬芝の種を上から播いて育てます。冬芝は、ペレニアルライグラスという種類です。芝生はイネ科植物ですから、種はお米を細長くしたような形状で5?程度です。スタジアムツアーに参加されたことがある方は見たことがありますよね?

DSCF8356%AD%A2.jpg DSCF8334.jpg


作業はデリケートです。種を播く前日に種が斑なく発芽するようにバーチカルカットという夏芝の量を減らす作業を行います。バーチカルカットの加減が成功の良し悪しを左右しすまが、バーチカット当日はあいにくの雨。我々の想い描いた状態には仕上げられませんでしたが、何とか種まき当日は貴重な晴天となり、予定通り作業を終えることができました。 
 播いた種の量は、1平方メートル当たり28gです。って、どれくらい量だかイメージ湧きませんよね。1平方メートル当たり28gって、上の写真の種が約400粒です。

          


これから毎日種を乾かさないように散水を繰り返し、天候によって多少前後しますが5日位で発芽する予定です。発芽したらまた報告しますね!


芝生観察日記 第21話
2010/09/22
 

芝生観察日記の第二十一話です。
平成22年9月21日

コンサートから9日が経過しました。この間、季節の変り目を感じる陽気でしたね。今日はまた30℃を超える残暑日となりましたが、期間中は最高気温が21℃なんて日もあって実に10℃も温度差がありました。私たち人間もこれだけ短期間に10℃の温度差があると体調を崩したりしますが、芝生も同様です。ただ、芝生は外気温も影響しますが大事なのは地温(土壌温度)と日照時間です。期間中、平均してこの二つの数値が悪くなかったのが幸いでした。
  地温は気温と必ずしも=ではないことを皆さんもご存じ?だと思いますが、一日気温が低下し 
 たからといって直ぐに芝生の成長が止まるわけではありません。総じて言えば今年のコンサート後の天候は傷んだ芝生の回復を後押ししてくれた気がします。

     
             コンサート翌日の芝                        9日経過した今朝の芝

 上の写真ですが、9日間の変化を比較して判りますか?見た目はフィールドのどこを見ても
コンサートの影響を感じることはできませんが、私たちキーパーからすると芝生の密度がまだ足りないので80%くらいの回復状況といった感じです。熱帯夜も納まり秋の訪れが日々感じられるようになりましたが、夏芝のティフトンにはまだまだ残暑が続いて欲しいものです。
 今週末には約1ヶ月ぶりのJリーグが開催されます。残された4日間で100%を目指します。
記録的な猛暑となった今年の夏。各地のスタジアムで暑さのために芝生が傷んでいるというニュースも聞かれましたが、日産スタジアムがつくづく夏芝で良かった!と実感する夏でした。逆に、冷夏だったら夏芝のティフトンへの影響は大きかったはずなので、こうやってブログを書く気力もなかったかもしれません、、、とはいえ、1週間後には冬仕度として冬芝の種を播きます。
次は、その播種について報告しますね。


芝生観察日記 第20話
2010/09/15
 

芝生観察日記の第二十話です。
平成22年9月13日

昨夜2日間に亘り行われたEXILEのコンサートを無事終了しました。両日ともに30℃を超える厳しい残暑が残る中での公演でしたが、8月と比べてやはり秋ですね。夜になると涼しくなります。この影響はテラプラス内で頑張っている芝生にも8月とは違った影響を見せました。

  
     10日テラプラス設置前          今朝テラプラス撤去後          ちょっと上から観た足形


今年の8月は異常な猛暑だった影響もありますが、日中35℃を超える日の夜温が26?28℃だったのに対して、今回は日中の最高気温は33?34℃と1?2℃低かった程度ですが、夜温が23?24℃と8月の夜温よりも3?4℃低かったのです。この差は、芝生が夜間に休息できる温度帯となるため過剰な負荷が掛からず、ストレスが少なくて済みました。
 上の写真からも判ると思いますが、テラプラスを撤去した後の丸い足型部分以外の色が黄色く変色せず、濃緑を保っていますね。これは、懸念されたテラプラスと芝生との空間の蒸れによる影響が思ったよりも少なかったためと考えられます。この状況から、今年3回行ったコンサート後の状態としては最も影響が小さかった感じですね。全治10日といったところでしょうか?
 今回の結果は、事前の対応策が的を得たものだと思いますが、何より主催者以下、舞台監督さんを始めとする設営スタッフ皆さんの「芝生のダメージを最小限に押さえたい」とういう共通理解があっての結果だと感謝しています。


 
      ヒョロヒョロと伸びるこれが「徒長」です              8月の状況です。違いが判りますか?


今日は、ヒョロヒョロと徒長した芝生を一気に短くは刈れないので、コンサート前に15?で刈った芝生を18?で刈った後は、十分に散水を行います。後はお日様に当ててあげるのが何よりもの治療薬です。明日から25日のJリーグに向けて養生管理を行います。
 ではまた、回復状況を報告します。

芝生観察日記 第19話
2010/09/11
 

芝生観察日記の第十九話です。
平成22年9月10日

11日、12日の両日、8月に続いて2回目となるEXILEのライブコンサートが開催されます。今年は、2アーチスト3公演6日間のコンサートが開催されるコンサート当たり年です。まさにコンサートの聖地ですね。 サッカーの国際試合よりも多いことに多少違和感を感じつつも、多くの皆さんに足を運んでいただけることはありがたいことです。


             
                    今朝の芝生です。月曜日にどうなっているでしょうか?

それに伴い今夜、今年3回目となるテラプラス(芝生保護材)が全面に敷設されます。テラプラスが敷設されている時間は2日間で凡そ60時間前後です。芝生の保護を目的として作られた材なので、芝生の生育に最低限必要な通気と日射量が得られるようになっています。
テラプラスによる芝生への障害は、当然の事ながらテラプラスの荷重に観客の皆さんの体重が加算された踏圧に加え、日射量減少と蒸れとテラプラス内の温度上昇です。このような負荷が重なって芝生が黄色く変色したり、ヒョロヒョロと上に伸びてしまう徒長といった状態になります。
そのため、芝生への影響を最小限に抑える対応策として、蒸れによる影響が一番怖いので事前にエアレーションを行いました。台風9号により十分に水分を含んでしまったので散水は控えます。さらに、刈込みをテラプラス敷設前に行い徒長する芝丈を極力抑えます。刈高は15?。この高さがポイントです!
テラプラスの敷設は、今夜21時から夜を徹して行われます。
2日後からは、我々グリーンキーパーの腕の見せどころです。25日に行われるJリーグに向けて万全を期します。

芝生観察日記 第十八話
2010/09/08
 

芝生観察日記の第十八話です。
新生SAMURAI BLUE(日本代表)が4年後のW杯ブラジル大会に向けて良いスタートを切ることができましたね。
 大事な舞台を整備する我々も色々な意味でホッとしました。
生でスタンドから観戦された方、又はテレビの画面で観戦された方、みなさんの目にはグラウンドの芝生はどう映りましたか?選手同士が交錯する場面では芝片が飛び散り、グラウンド大丈夫かなぁ。。。と、心配された方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 実際、テレビ中継でもパラグアイの選手がスパイクを履きかえるシーンで「今年の夏は暑くて、芝生が悪い。。。」 なんてやり取りが流れていましたが、ちょっと心外ですね。日産スタジアムは夏冬2種類の芝生を使い分けているので今は暑さに強い夏芝です。いくら暑くても散水さえしてやれば全然びくともしない芝生なんですけどね。
我々的には現状が悪いとは思わないし、逆に今年の猛暑で例年よりも良い位だと捉えています。現に、試合前日の公式練習を終えた代表チームからは何にもオーダー出ませんでした。ある選手からは「このままの状態を維持してください」とも言われました。
サッカーには、ホームとアウェーがありますよね。ホームチームにはサポーターの皆さんの応援だったり、気候だったりと、色々なアドバンテージが発生しますが、今回のパラグアイ選手のスパイク交換という状況は、グラウンドの良し悪しというよりも慣れない芝生への対応だったように思います。そもそもこの辺の事に対応するために、試合会場での公式練習というものがあるはずですが、あの選手に限っては公式練習と試合前のアップでも日産スタジアムの芝生に馴染んでもらえなかったようですね?
 いずれにしても全国ネットの中継で日産スタジアムの芝生の状態が悪いという印象がテレビで観ている皆さんに伝わってしまったのは残念です。。。

 
         試合後の状況です。荒れたように観えても実際の傷は小さいものばかりです

芝生は我々と同じ生きものなので一年を通じてみると良い時もあれば、悪い時も必ずあります。でも、異常気象やコンサートをやったからと言って芝生が悪いとは言い訳はできませんし、選手に迷惑をかけるわけにはいきません。今後も与えられた環境の中で最善を尽くしていきます。
今週末はまたコンサートを予定しています。次回は、コンサート前の養生について報告します。

芝生観察日記(第十七話)
2010/09/04
 

芝生観察日記の第十七話です。
速報!!
いよいよ今夜、W杯南アフリカ大会でベスト16まで勝ち進んだ我らがSAMURAI BLUE(日本代表)がパラグアイ代表と対戦します。両チームの過去の対戦成績は確か1勝3敗3分と決して優勢とは言えない手ごわい相手ですが、是非ともW杯での雪辱を果たしてもらいたいものです。
 昨夜、両チームの公式練習が行われましたが、親善試合と言えどもやはり両チームとも負けられない試合であるのは練習後の芝生の傷みかたからも判ります。

    
                         こんな傷や凹みがいっぱいできました


                
                         今朝の芝、コンサートの影響はありません


今日もまた30℃を超える厳しい残暑が予想されます。芝生もカラカラに乾いていたので今朝少しだけ散水をしました。あまり乾いているとボールの転がりが鈍ります。つまり日本が目指す攻撃的パスサッカーに影響することになります。散水したら思いがけず綺麗な虹を見ることができました。写真で判るでしょうか?この虹が4年後のW杯ブラジル大会に繋がる第一歩となることを願って皆さんも今日の試合を応援しましょう。その第一歩が日産スタジアムから始まるのは光栄なこととです。

             

芝生観察日記(第16話)
2010/09/02
 

芝生観察日記の第十六話です。
今年の夏は記録的な猛暑となりましたが、まだまだ厳しい残暑が続きそうですね。
ずい分久しぶりとなってしまいましたが、みなさんからのご要望も多いようなので芝生の現状について報告しますね。
日産スタジアムでは今年も人気アーチストによる野外コンサートが2週連続で開催されました。サッカーや陸上の聖地だけでなく、実は野外コンサートの聖地?でもあるようです。芝生を管理する者にとっては微妙な想いがありますが、スポーツ以外のお客様にもこのスタジアムを満喫していただく最高の舞台と理解しています。
さて、コンサートをやると芝生はどうなっちゃうの?という素朴な疑問を感じませんか?
コンサート風景は諸般の事情によりお見せできませんが、芝生の上にもお客さんが座るということは間違いなく、当然芝生は傷みます。それもかなり。。。。

  

こんな風にグラウンドがコンサート会場に変わります

芝生の上には「テラプラス」という専用の芝生保護材が敷かれます。実はこれイギリスのサッカーの聖地として有名な「ウエンブレースタジアム」が開発したものですが、保護は完璧ではありません。  
芝生上の席、一般的にアリーナ席と呼ばれる部分には1回当たり約15,000?20,000人分のイスが並べられます。

  DSCF7953%AD%A4.jpg

コンサート後は保護材の足型が残り、こんなふうに黄色く変色してしまいます

写真では傷みの度合いがあまり伝わらないかもしれませんが、直ぐにサッカーが出来る芝生ではありません。スタジアムはサッカーや陸上といった競技だけでなく、様々なイベントにも使われているので、芝生を守る立場の者には悩ましい状態です。8月29日にはJリーグ、そして9月4日には日本代表戦が控えています。気が休まらない日が続きますが、選手に迷惑をかけるわけにはいきません。
ここからが腕の見せ所といったところでしょうか?また、時間をおいて回復状況を報告します。

芝生観察日記(15)
2009/12/03
 

 芝生観察日記の第十五話です。
 前回の冬芝播種(オーバーシード)から少し時間が空いてしまいました。追い播きした冬芝の種も今では根を下ろして美しい芝生になっていますが、今年の秋は寒暖の差が激しく、ここぞというタイミングで雨に見舞われる天侯は、芝生にとって決して良好とは言えず、冬芝の種も発芽してから芝生になるまで思うように育ってくれませんでした。
 北国からは初雪の便りがあちこちから届き、いよいよ冬の訪れを感じさせる季節となりました。日産スタジアムの芝生もこれから訪れる厳冬期に備えた準備を始めています。夏芝は貯蔵養分を蓄え来春の萌芽に向けて休眠(動物でいう冬眠)が近づいています。夏芝が休眠している間のフィールドを緑に保ってくれる冬芝は着実に根を下ろして株を太らせています。とはいえ、冬芝はまだまだ大人にはなっていません。急激な気温の低下によって葉が萎縮して生育を鈍らせてしまう恐れがあります。
 このような寒さによる影響から芝生を守るため一週間ほどビニール製のシートを設置して保温したのですが、期間中の雨が災いして予定よりシートの設置期間が長くなった結果、夏芝に病気が発生してしまいました。正式な病名は「カーブラリア葉枯病」ですが、通称「犬の足跡」と呼ばれています。



 その症状から付いた名の由来通り、犬が歩いた足跡のように芝生が赤く枯れてしまいます。通常は高温多湿な季節に発生する病気なので季節外れではありますが、シートを設置したためその環境を作ってしまったようです。スタンドやテレビ画面では判らない程度の病気ですがちょっと想定外でした。
 芝生も生き物なので我々が風邪をひくように病気にもかかります。人間社会でも新型インフルエンザが流行っていますので気をつけましょう。

芝生観察日記(14)?冬芝の播種(オーバーシード)?
2009/10/07
 

芝生観察日記の第十四話です。
今回は、9月20日に行った冬芝の播種(オーバーシード)状況と、その後の発芽、生育状況ご紹介します。


スパイク付きローラーで
穴開け
  作業風景   ロープを張って
真っ直ぐに播種

 今年も秋から春の間、日産スタジアムのフィールドを常緑に保つため夏芝の上から冬芝の種を播きました。今年の播種量は、1m2あたり約30gです。例年はもう少し多く播きますが、 今年は、夏芝への負荷を軽減して来春の夏芝への切り替えを容易にするため種の量を例年より少し減らしてみました。
 冬芝の種は下の写真にあるような直径3?4mmの大粒な種類を使用します。 作業は、クギのようなスパイク刃で穴を空け、その穴に種が落ちる仕組みの機械を使い、曲がらないように糸を張って作業します。播種後は種の乾燥防止などのため目砂(覆土)をして完了です。


冬芝の種   穴は目立ちませんが
播種後の状況
  播種後は目砂(覆土)して
乾燥防止

 播種から4日後、解りづらいですが下の写真にあるように新芽、つまり発芽を確認できました。天候にも恵まれ順調な発芽ですが、これから秋雨が続き、気温も低下してくるためしっかり根を下ろして、選手が走っても負けない芝生になるまでには時間がかかります。今後も経過を紹介していきますが、皆さんもJリーグやスタジアムツアーなどで是非スタジアムに足を運んでその生育過程を目で見て感じて下さい。緑の色合いが変わります。写真は夏芝だけの全景ですが、明らかに美しい緑になりますのでお楽しみに!


芝生観察日記(13)?GLAYコンサート?
2009/09/07
 

 今回は、8月15日、16日の2日間に渡って開催された「GLAY」のコンサートで芝生がどうなって、その後どうなったかをご紹介します。

 スタジアムでコンサートを開催する場合は、芝生の上に専用の芝生保護材「テラプラス」を敷いて芝生を護ります。
1m×1mの正方形が4枚連結されたものを全て人海戦術で約8000枚を敷き詰めます。
作業は夜中6?7時間かけて行われます。
テラプラスを敷き、折り畳みイスを置けば約18,000席のアリーナ席が完成です。

 

 

 

 

 

コンサートは2日間。テラプラスの設置時間は約60時間。長い時は70時間にも及び、この間芝生は太陽の光りを遮られます。
コンサート当日は、30℃を超える真夏日となり、テラプラス内の芝生は凡そ50℃を超える厳しい環境下で我慢の時を過ごしました。
当然、観客席ですからお客さんの体重も加わって芝生にとっては過酷な負荷がかかる状況となります。

 

 

 

 

 

 さて、2日間で約150,000人のGLAYファンが熱狂した宴が終わり、その後直ちに舞台等の解体作業と共にアリーナ席となっていた芝生の上のテラプラスの撤去作業が始まりました。
 芝生はどんなふうになっちゃったのでしょうか?毎年のように行われるコンサートですが、何回経験してもこの1枚目のテラプラスを剥がす瞬間はドキドキします。

 どうですか?コンサートの後の芝生はこんなふうになります。でも、手当してあげることで完全ではありませんが約2週間あれば回復します。コンサートで多くの方に喜んでもらいたいという思いもありますが、日産スタジアムの芝生はやはりサッカーを始めとするアスリート達が最高のパフォーマンスを演じられる夢の舞台として、常に最高の状態で提供できるように今後も大切に守っていきたいと思います。

芝生観察日記(12)?FIFAクラブワールドカップジャパン2008 ?
2009/01/18
 

 みなさん、明けましておめでとうございます。
 芝生観察日記の第十二話です。昨年8月の第十一話以来ずいぶんご無沙汰してしまいましたが、この「芝生観察日記」をブログに掲載するようになって早いもので一年が経過しました。
 昨年末、この観察日記を書き始めるきっかけとなった「FIFAクラブワールドカップ(以下、FCWC)」が開催されました。今大会をもって二年間はUAE(アラブ首長国連邦)開催が決まっている節目の今大会は、ヨーロッパ代表のマンチェスターユナイテッドが世界一の栄冠を勝ち取って無事終了しました。
 思えば一昨年(2007年)のFCWC決勝前日の朝、FIFAのゼネラルコーディネーター(以下、GC)から言われた「昨年より何故芝生が悪いんだ」という一言に奮起し、最高の芝生でGCを見返してやりたいという意地と決意で書き始めたこの観察日記、そしてこの一年でした。
 しかし、今年の大会に向けた我々の思いに反して、最高の芝生を作るためには厳し過ぎるフィールド利用が続きました。特に、8月と9月には2週連続を含む6日間の人気グループによるスタジアムコンサートが開催され、芝生にとっては大きなストレスとなりました。日本最大規模のスタジアムを運営していくためには欠かせない収益の柱であり、我々も苦しい胸の内です。それでも、9月のコンサートから三ヶ月が経過して迎えたFCWC。FIFAから派遣されたは、昨年の大会で我々を奮い立たせたあの人物でした。                       
 今大会は、準決勝、3位決定戦、決勝戦の3試合に5位決定戦が加わるタイトなスケジュールでした。そして試合に出場する全てのチームは公式練習を行うため、2日間で4試合の他、公式練習が3日間で6チームという2002年W杯の時以上に厳しい日程でした。

前回のFCWC決勝戦前日の状況     今回のFCWC決勝戦当日の状況

※上の写真が前回と今回の比較ですが、照明下と日照下で解りずらいですがゼブラ模様の鮮明さがポイントです。

 2002年は6月の開催ということで、芝生の生育に適した時季だったので、傷んだ後の回復がある程度想定できる時季でした。しかし、FCWCが開催される12月は、日産スタジアムの芝生にとって生育が鈍化する時季であり、傷んだ部分の回復が期待できません。そのため、我々ができることはとにかく傷まない芝生を作ることでした。そして、傷んでしまった部分は徹夜してでも補修を行い、試合に影響しないように舞台を整える決意で今年の大会に臨みました。
 上の写真が苦い思いをした昨年と今年の状態の比較写真です。どうですか、ゼブラ模様の差が解りますか。今年は自信を持ってGCに見せることができました。そして、GCからもらったコメントは「Very Good!」でした。なんか、この一言で我々が一年間取り組んできた苦しい思いを払拭してくれる言葉でした。
 選手からの評判も良かったようです。特に、北中米カリブ海の代表として来日したメキシコのパチューカの選手達が、芝生を撫でながら口々に素晴らしい芝生だと感動していたそうです。これもまた我々にとっては何よりも嬉しいことでした。
 しかし、さすがに決勝戦を迎えるにあたっては、試合と公式練習でゴール前が激しく傷んでしまったため、決勝戦前日までに張り替えを行いました。

ゴール張り替え前     ゴール張り替え後
         ゴール張り替え前                   ゴール張り替え後

公式練習と試合を重ねていくに連れてGCもさすがにフィールドの状態が不安だったようですが、決勝戦当日の朝に張り替えられたゴール前を見て驚きの表情を浮かべていました。
世界一のクラブを決定するフィールド。そのフィールドの管理を任された我々の責任は重大です。噂話でも芝が悪かったから負けたなんて言われないようにしなければなりません。その重圧の中、手塩にかけて育ててきた芝生をこの大会だけのために張り替えることは胃が痛くなるほど辛い選択でした。養生してやれば来年にはまた良くなるのは解っています。それでも、世界一を決める最高の舞台を整えるのが我々の役目だと自覚しての決断でした。
日産スタジアムの一年を締めくくる大会として定着していたFCWCも2009年は、残念ながら開催されませんが、今年はF・マリノスのリーグ優勝と日本代表のワールドカップ出場を足下から支えられるように常に最高の舞台を整えていきたいと考えています。
また、不定期ですがこの「芝生観察日記」を今年も書き続けていきますのでよろしくお願いします。


前回の芝生観察日記(11)はこちらをご覧下さい

第1回目の芝生観察日記(FIFAクラブワールドカップジャパン2007)はこちらをご覧下さい

芝生観察日記(11)
2008/08/16
 

 みなさん、こんにちは。
 「芝生観察日記」の第十一話です。
 7月中旬から8月初旬にかけて、芝生の葉先に綿毛のような白い物(写真1・2)が目立つようになりました。これって何だか解りますか?
 これは芝生の根や茎を食べてしまう蛾類の卵を尾毛で覆った卵塊と呼ばれるものです。大きさは米粒大から大豆大の物まで色々ですが、この卵塊の中には多くの卵が守られており、卵塊の大きさは産み付ける蛾の種類によって異なります。芝生の根や茎を食害する蛾の仲間は、シバツトガ(写真3)、スジキリヨトウ(写真4)、タマナヤガの主に3種類です。
写真1     写真2     写真3
         写真4      写真5

 これらの蛾の仲間は、幼虫期に芝生の根や茎を一晩でめちゃくちゃ食べ荒らします。しかし、成虫になると害はありません。食害(写真5)された芝生は、枯れて地際に細かく砕かれた芝カスが残るので赤茶色に目立ちます。また、これらは4月から10月にかけて年に3回程発生しますが、近年は天候が不順なため4回発生する年もあり、観察を怠り、発見が遅れるとフィールドが丸坊主になってしまうこともあるので日々の観察により早期発見に努めることが重要です。
 芝生を荒らす害虫には、蛾類の他にコガネムシやゾウムシ、カメムシなどの仲間がおり、それぞれ発生時季や食害の症状が違うのでグリーンキーパーの観察力が問われると同時に腕の見せどころでもあります。
 今回は蛾の仲間についてお話しましたが、別の害虫や病気を発見したらまた報告しますので、お楽しみに!!

前回の芝生観察日記(10)はこちらをご覧下さい

   

               

芝生観察日記(10)
2008/08/13
 

みなさん、こんにちは。
「芝生観察日記」の第十話です。
7月7日、七夕の日に植えた夏芝の苗(ティフトン419)が約3週間経過してフィールド上に顔を出し始めました。
 下の(写真1)は、連日の猛暑で赤く枯れた冬芝の中にポツポツと夏芝の株が残っています。そして、中央に補植の溝があり、その溝沿いに植えた苗から芽を出した夏芝が筋状に顔を出しています。その状況を少し離れた場所から見たのが右側の(写真2) です。うっすらと淡い緑色の帯が筋状になっているのが解りますか?

photo1    写真2 
         (写真1)                            (写真2)

 現状はまだ根付いたばかりの赤ちゃんのような状態ですが、このまま猛暑が続けば8月末には赤く枯れた冬芝の部分を夏芝が埋め尽くしてしまうでしょう。そうなれば今年の切り替えもほぼ完了です。
 後は9月末から10月上旬に実施する予定の冬芝播種までに越冬用の貯蔵養分をしっかり蓄えさせることが、また来年良い夏芝を作るための大切な準備作業となります。
 完全に夏芝のフィールドが出来上がった頃に、また補植した夏芝の続報をご報告しますのでお楽しみに。

前回の芝生観察日記(9)はこちらをご覧下さい

芝生観察日記(9)
2008/07/11
 

 みなさん、こんにちは。
 「芝生観察日記」の第九話です。
 7月7日、七夕の日に今年も夏芝の苗(ティフトン419)をフィールドに植え込みました。
我々の間では補植と呼んでいる作業です。日産スタジアムの夏芝は、三重県鈴鹿生まれですが、今回使用した苗は宮崎県生まれなのでハーフになるわけですね。
補植に用いる苗(写真1)は、畑から切り出した芝生を水洗いした後に解したものを使用します。
補植の方法は、専用の機械(写真2、3)を使います。補植の流れ(写真2)としては、機械前方のカッターで切った溝に、人力で投入(写真4)した苗が落下し、その苗は後方のブレードで溝に押し込まれ、更に後方のローラーで溝を転圧して塞ぎます。しかし、機械でできるのはここまでで、押し込まれた苗は完全には入り切らない(写真5)ため、最後は人力で表面に出た苗を押し込んで(写真6)完了です。

写真1  写真2  写真3
(写真1)                 (写真2)                (写真3)

写真4  写真5  写真6
(写真4)                 (写真5)                (写真6)

 今年の補植は、ダメージが集中して夏芝の芽出し量が少ない、メイン側とバック側の各ラインズマン(副審)走路部分とセンターサークルとペナルティーエリアを結ぶセンター付近に限定して行いました。
 夏芝は基本的に多年生なので、通常は補植などを行わなくても時季が来れば出てくるものですが、屋根に覆われた上、人工地盤という特殊な環境である他、サッカーによるダメージが集中する部分ではどうしても夏芝の芽出しが悪いため、毎年状況を見ながら補植を行います。
 みなさん、どうですか?補植とは人間で言うところの増毛です。こういった地道な作業によって日産スタジアムのフィールドは、通年良好なコンディションを維持しています。

次回は、今回補植した苗のその後について、ご報告したいと思いますのでお楽しみに!


前回の芝生観察日記(8)はこちらをご覧下さい

芝生観察日記(8)
2008/07/04
 

みなさん、こんにちは。
「芝生観察日記」の第八話です。
梅雨入りして早いもので1ヶ月が経過しました。今年の梅雨は、例年よりも雨が多く、気温が低い傾向であるため夏芝にとっては厳しい環境下での切替えとなっています。
そのため、お天気任せの自然な切替えでは夏芝への完全な切り替えは難しいと判断し、機械を使用した人為的な切替え作業を6月30日と7月1日に分けて実施しました。   

初めにバーチカット(写真1)を実施しました。これは包丁の刃がたくさん付いたような機械(写真2)で、芝生を引掻いて密度を調整する作業です。この作業を行うと芝生が、掻き出された芝カスで隠れてしまいます(写真3)。バーチカットを行うことで芝生の芽数が梳かれ、夏芝が出易くなるようにスペースを確保します。
写真1  写真2  写真3
写真1                  写真2               写真3

次に、芝生に穴を空けるバーチドレン(写真4)を実施しました。これは直径8mm(太さ、長さ、穴の間隔は目的に応じて変更します)の釘が18本付いた機械(写真5)で芝生に穴を空けます。バーチドレンを行うことで乾燥に弱い冬芝を衰退させ、土壌中に酸素を供給することで夏芝の根を活性させます。今回使用した直径8mmの仕様では芝生に殆ど変化は見られません(写真6)。
どうですか、穴が空いているのが解りますか?
写真4  写真5  写真6
写真4                  写真5                写真6 

今回は、バーチカットとバーチドレンという切替え作業の中でも代表的で、手荒な部類の作業を続けて行いましたが、他にも切替えのための作業として、散水を控えたり、刈込みの高さを下げたりして冬芝を弱らせる方法も随時行います。
しかし、バーチカットやバーチドレンといった作業は、天候次第では非常にリスクが高く、今年のように低温、多雨の年には夏芝の活性が鈍いので、冬芝を弱らせるため仕方なく実施します。でも、できることなら散水や刈高調整程度で、芝生を傷めず、利用者へも迷惑をかけない自然な切替えをしたいと想うのですが、なかなか生き物は難しいというのは何年経っても変わりません。
果たして、今年の切替えは上手くいくのだろうか?また、胃が痛い季節がやってきました。
次回は、夏芝の苗を補植する作業の様子をご紹介しますね!お楽しみに。

前回の芝生観察日記(7)はこちらをご覧下さい
  

芝生観察日記(7)
2008/06/15
 

みなさん、こんにちは。
「芝生観察日記」の第七話です。
6月1日、今年も梅雨がやってきました。雨模様の蒸し暑い日が続き不快に感じる人もいる約1ヶ月半。実は芝生にとっては有難くない季節です。

梅雨は日照不足と水分過多によって病気や害虫による被害を受け易い季節です。しかし、いざ病気や害虫による被害を受けても連日雨が降っていては、殺菌剤や殺虫剤といった薬剤散布による対処ができず、被害を拡大させてしまいます。ただでも、スタンドの屋根による日照不足や人工地盤といった構造的な影響もある日産スタジアムの芝生にとっては、なおさらストレスが大きくなる季節です。

そこで、我々は梅雨の蒸し暑い天気や病虫害にも強い芝生を作ることで、これらのストレスに対する抵抗力を備えさせようと芝生を育てています。強い芝生とは、根が長く、そして太くて密度が多いことが必要とされ、根さえしっかりしていれば多少のストレスも乗り越えられるのです。

写真1 サッチ層 写真2。5月末


上の写真は、同じ地点の根の状態を、4月末(写真1)に採取したのと5月末(写真2)に採取したものを比較した状況です。単純に写真からだけでは善し悪しを説明しづらいのですが、写真2の方が根の密度が太く、量も増えています。更に、写真1よりも写真2の方がサッチ層と呼ばれる砂に根茎や葉の腐敗したものが堆積して作られた層の厚みが薄くなっています。この層が薄くなることによって降雨時の排水性が向上します。芝生を支える土壌部分は、適度な水分が必要ですが、常に水浸しの状態では根が伸びようと努力をしなくなってしまうので、必要以上の水分はしっかりと排水されるように管理しなければなりません。
そして、梅雨が明けて暑い夏を乗り切るためにも、根とサッチ層を適度な状態に維持することがこれからの大事な管理課題となります。

さて、前回冬芝から夏芝への切替わり状況について報告しましたが、4月末には冬芝が9に対して夏芝が1というような状況でした。それから1ヶ月が経過し、現状は冬芝7に対して夏芝が3といった状況でしょうか?目標の6対4には残念ながら到達しませんでした。その要因としては、5月の気温の寒暖差が大きかったことが考えられます。そして、昨年より20日早い梅雨入りで今後の切り替えが更に厳しくなりましたが、6月末には何とかして5対5まで持っていきたいと思います。

今後の途中経過は、また随時報告していきますので、次回もお楽しみに!!。

前回の芝生観察日記(6)はこちらをご覧下さい

芝生観察日記(6)
2008/05/10
 

みなさん、こんにちは。
お待たせしました。「芝生観察日記」の第六稿です。
3月のJリーグ開幕戦から約2ヶ月のご無沙汰となってしまいました。
この間、日産スタジアムも職員の異動や事務所内の引越しがあったりで、この芝生観察日記も慌しさに埋もれて遠のいてしまいました。しかし、この間も芝生は元気でしたよ。
                                
写真1は、3月の開幕戦で傷付いた部分に、夏芝が伸びて傷口が埋ってきた状況です。2月の気温が例年よりも低めだったためやや出遅れた夏芝でしたが、今では例年を上回る勢いで、冬芝から夏芝への切り替えが進んでいます。

傷ついた芝生
写真1

しかし、ただ一点、懸念されるのは例年よりも冬芝の芽数が多く、元気なため夏芝が出るのを邪魔しているのです。この状況に対する対策として、芽数を調整するため既にサッチングやグルーミングといった切り替えのための作業を行っていますが、これらの作業についてはまた別の機会に説明します。

写真2は、4月末に撮ったフィールドの全景です。冬芝の芽数が多いため色合いも濃く、綺麗なゼブラ模様となっています。

4月のフィールド
写真2

現在、芝生の刈高は20mm(5月3日時点)。6日にJリーグがあるための設定ですが、この試合が終わるとしばらくフィールドの利用がないため、切り替えのための低刈りとして15mmまで下げる予定です。

ちなみにJリーグなどのトップレベルの平均的な芝生の刈高は、20?25mmです。これは、スタジアムごとの芝生の種類や時季によっても多少前後します。

我々が夏芝と冬芝の切替わり状況を示す時、5対5とか6対4といった表現をしますが、現状は1対9。夏芝が1に対して冬芝が9といった感じでしょうか?
今後は5月末で4対6、6月末には逆転して6対4、7月末で7対3という目処で切替わりが進み、最終的に全部夏芝となるのは8月末から9月に入ってというペースですが、これはあくまでも理想であり、冷夏だったりすると冬芝が完全に消えず、再び冬芝の播種を行う季節を迎えることもあり、毎年お天気と相談しながらの作業となります。

芝生の割合が変化すると芝生の色合いも必然的に変化していくので、その辺もお楽しみに。

さて、今年の切り替えはどうなる事やら??途中経過はみなさんにも随時報告していきますので、次回もお楽しみに!!

前回の芝生観察日記(5)はこちら


芝生観察日記(5)
2008/03/17
 

みなさん、こんにちは。
 「芝生観察日記」の第五稿です。
 3月8日、いよいよJリーグが開幕しました。試合の結果はみなさんもご存知かと思いますが、ホームのF・マリノスが優勝候補筆頭の浦和レッズを破って、素晴らしい開幕スタートを切りました。昨シーズンは、なかなかホームで勝てなかったため、我々フィールドスタッフも歯痒い思いの連続でしたが、今シーズンは是非ホームゲームを大事に戦い、勝利を収めて欲しいものです。
 そのためにも、我々フィールドスタッフは最善を尽くしてコンディションを整えていきたいと思います。
 さて、3月8日の芝生の状態ですが、2月の厳しい冷え込みの影響で冬芝の活性が思うように上がらず、開幕に向けて多少不安な状態でしたが、養生シートやアンダーヒーティングのお陰で何とか景観上は見映えのする状態となりました。下の写真が当日の全景ですが、部分的に夏芝の枯れた茶色の筋が残っていますが、ほぼ例年並みといった感じでした。
 この試合を、スタジアムで直接見られた方、またテレビの画面を通して見られた方、それぞれどのような印象を持たれましたか。
 この仕事をしていると、同時刻に行われている他のスタジアムでの試合が気になります。決して試合の状況ではありません。「隣の芝生。。。。」なんて言いますが、他のスタジアムの芝生の状態は良い意味で刺激になります。芝種も管理方法も違うので単純に比較はできませんが、職業病でしょうか。          

(3月8日の状況)

3月8日の状況

            
 しかし、何より大事なのは見た目ではなく、実際にプレーする選手達の足で感じる感覚とボールの転がり具合です。足で感じる感覚とは弾力のことですが、芝生表面の弾力を測る専用のテスターによる硬度値は74ポイント。これはかなりフカフカした弾力が感じられたと思います。また、ボールの転がりは見た目の判断になりますが、冬芝がやや株化してしまったため緩いパスだとボールが時々跳ね上がる状況(通称:ラビットボール)が見られました。これに関しては、次節までに改善しなければならない課題が見付かりました。
 選手達にとって芝生のコンディションはとても重要ですが、どんなに良い芝生を作っても試合に負けると芝生が悪かった。どんなに凸凹でハゲチョロの芝生でも勝てば文句を言わないのが常です。
 良くて当たり前の芝生。我々にゴールはありません。常に良い芝生を作ることを目標に日々、芝生と向かい合っています。
 こういった想いを選手達がどの程度理解してくれるかは解りませんが、最高のコンディションで最高のプレーを演出するために、今後もがんばっていきます。今後サッカーを見る時、みなさんも少し目線を変えて、見て下さい。次回をお楽しみに。

芝生観察日記(4)
2008/02/27
 

 みなさん、こんにちは。
 「芝生観察日記」の第四稿です。今月始めに降った雪の影響で養生シートの撤去が遅れてしまい、報告が予定よりちょっと遅れてしまいました。
前回は芝生の話題から少し話がそれましたが、今回は再び日産スタジアムの芝生について見てみましょう。
 1月22日に設置した養生シートを4日に撤去する予定でしたが、積雪の影響で2日遅れてしまい6日に撤去しました。15日間に及ぶ養生は年末年始の12日間よりも長く、この冬最も長期間の設置となりました。今回の設置により冬芝が改めて芽数を増やし、休眠で白っぽく枯れた夏芝が目立たなくなり、フィールド全体の緑度が増しました。

1月7日の状況  2月6日の状況

   (1月7日の状況)       (2月6日の状況)    
 上の写真は、1ヶ月間の変化を比較したものです。全体的に緑が濃くなり、夏芝との色むらも解りづらくなっています。刈込み跡のゼブラ模様も美しく、景観だけで言えば、このままJリーグの開幕戦を迎えても問題のない状態に見えます。しかし、Jリーグのようなプロレベルの試合で選手達が最高のパフォーマンスを繰り広げるためには、見た目の美しさも当然大事な要素ではありますが、何よりも大事なのが芝生の根です。  下の写真は、昨年の5月と今月6日に採取したセンターサークル付近の根の状態を比較したものです。先ほど芝生は見た目だけではなく、根が大事だと言いましたが、日産スタジアムの芝生が一年で最も美しく、状態が安定しているのが春から初夏にかけての期間であり、中でも4月から6月の3ヶ月間位が最も根が地中深く伸びます。それに対して厳冬期のこの時季は、春の萌芽に向けて蓄えた養分を消耗しながら、地温が高くなるのをジッと我慢しているので根はあまり伸びません。写真では、5月の方が根の密度が多いのですが分りますか。  
平成19年5月28日  平成20年2月6日
  (平成19年5月28日)     (平成20年2月6日)        
 3月8日のJリーグ開幕戦まで2週間と迫りました。この大事な試合で、選手達が最高のパフォーマンスで競技できるように足元からアシストしたいと想います。そのためには、現状を踏まえて5月のような根の状態を目指さなければなりません。そして、我々がやらなければいけないことは、冬芝の根を少しでも多く出して、長く、太く育てるための作業を行うことです。   具体的には、定期的に刈込みを行い、冬芝に刺激を与えます。次に、冬の間に消耗した養分を補うため適度な肥料を施します。また、芝生に穴を空けるエアレーションにより土中に酸素を送るなどの作業を行うことで根の活性を図ります。  このような作業の結果、3月にはどの程度まで根が伸びたかは、開幕戦の状況と合わせて次回報告します。お楽しみに!
芝生観察日記(3)
2008/02/09
 

 みなさん、こんにちは。
 「芝生観察日記」の第三稿です。今回はちょっと芝生から話がそれますが、下の写真?は日産スタジアムの芝生ではなく、お隣の日産フィールド小机の芝生の写真です。芝生の仕様は、日産スタジアムの補助競技場という位置付けであるため、同じ夏芝と冬芝のオーバーシード方式を採用しています。そのため写真の白っぽくなった部分が夏芝で、濃い緑色の部分が冬芝というわけですが、中央付近の芝生だけ何となく変だと思いませんか?少しだけ淡い緑で妙に周りより浮き出て見えませんか?これって実は雑草なんです。

写真1  写真2  写真3  写真4
写真1       写真2          写真3        写真4

この雑草の名前は、その名も「スズメノカタビラ(以下、カタビラ)」です。名前の由来は、「小さい小穂をつけた花序(写真?)を雀に着せた単衣(ひとえ)の着物にたとえたもの」と本には書いてありました。また、カタビラ(帷子)は「夏の単衣で麻製の着物」を江戸時代はそうよんでいたそうです。私も結構勉強になりました。
この雑草の特徴は、見てのとおり芝生そっくりですよね!我々は一目瞭然で見つけられますが、
みなさんには芝生だか雑草だか見分けがつかないと思います。それもそのはずカタビラは芝生と同じイネ科植物なんです。非常に繁殖力が強く、一粒の種から写真?のように携帯電話程の株になります。これが芝生の中に入り込むとグリグリのボーボーになって滑らかな芝生表面を凸凹にしてしまうので、ボールが真っ直ぐ転がらないなどの影響が出てしまいます。そのため、サッカーのような大きいボールを転がすスポーツはまだしも、ゴルフ場のグリーンなどでは特に厄介な雑草として嫌われています。
 生育環境としては、真冬や真夏は目立たなくなりますが、ほぼ一年中見られます。生育場所としては、芝生内はもちろんのこと、道端(写真?)、庭の隅、畑などどこでも生えます。その中でも特に湿気を好むので、田植え前の水田には一面にびっちり生えているのを良く見かけます。
また、普通植物は日照がないとまともに生育できないものですが、カタビラは日向でも日陰でも良く育ちます。生育分布も広く、極地以外は世界中で見られます。このカタビラ、写真の?や?ではみなさんもピンと来ないかもしれませんが、写真?を見ると公園などで見かけたことはありませんか?
 このような生育特性を持つカタビラをやっつけるのは至難の業です。ゴルフ場や田畑では、環境にもやさしい薬剤が多く市販されています。ゴルフ場や田畑では、発芽前の春秋年2回程度、薬剤による防除を行うのが一般的な方法です。
 しかし、ここ日産スタジアムを始めとする新横浜公園内は、条例に基づき、薬剤が使用できないので、人力による除草作業行っています。ただ、この雑草を写真?のように大きく株化させてしまったものを一日中手で抜き取っていると、腱鞘炎になりかねないくらい、意外と重労働なんですよ。
そのため、大きくさせないように日頃から注意して、見つけたら抜くという癖を付けるように心掛けています。如何に綺麗な芝生でもカタビラが密集してしまうと見た目ばかりでなく、クオリティーも低下させてしまうので、我々はこういったところにも注意しながら管理しています。凄く地味ですが、「スポーツターフ」を管理する上では大切な作業なのです。
どうですか、今回はみなさんにも勉強になったでしょう!
 次回は、久しぶりにシートを剥がした日産スタジアムの状況を報告します。芝生を抜いて根っ子の状態もご紹介したいと思いますのでお楽しみに!

芝生観察日記(2)
2008/01/25
 

みなさん、こんにちは。
 「芝生観察日記」の第二稿です。前稿では年末から設置していた養生シートを撤去した後の状況についてお話しましたが、今回はその後再設置したシートを今日(1月21日)12日ぶりに剥がしたのでこの間の変化についてお話したいと思います。
 1年中で最も寒い時季とはいえ、みなさんも最近の寒さにはうんざりしているんじゃないでしょうか。それは芝生も同じです。冬芝と夏芝を併用しているスタジアムの芝生は、この時季緑鮮やかな冬芝で覆われています。冬芝=寒地型芝生、その名の通り寒さには強いのは事実ですが、生育適温は15?22℃と言われています。最低気温が0℃前後で最高気温が10℃を割るような日が続くこの時季は生育停滞期で、芝生の状態が悪くなることはあっても、アンダーヒーティング等で加温しない限りは良くなることは殆どありません。ですから、今の時季は3月のJリーグ開幕に向けて最低限の状態を維持するためにシートを掛けます。このシートを掛けることによって芝生表面の温度が2℃程度上がります。シートを設置する目的は二つあり、「保温」と「霜除け」です。詳しくは「芝生とっておきの話(9)」で復習してみてください。下の写真は年明け7日の状況と今回12日ぶりにシートを剥がした21日の状況です。ちょっと見比べて見て下さい。

1月7日の状況 1月21日の状況
                 1月7日の状況                 1月21日の状況
 
どうですか?微妙でしょう!手元の写真では多少今回の方が緑が濃くなって見えるんですが、恐らくみなさんの画面では同じように見えるでしょうね?それでも良いんです。シートを掛けていないと寒さや霜に当って冬芝の葉先が黄色く変色してしまうからです。それを防ぐだけで十分な効果が確認できたことになります。この寒さはしばらく続きそうなので、23日には再びシートを掛けて養生を行います。

  DSCF2393-s.JPG

  
 シートはフィールドを4分割にしたサイズ(1枚が約35m×55m)です。シートが乾いていれば3?4人、雨の後など濡れている時は5人でも辛い作業です。たたんで収納する時には上のように小さくなりますがとても一人では持てません。次回シートから芝生が顔を出すのは恐らく2月に入ってからなのでまた報告します。次回までにどれ位の変化が見られるかお楽しみに。

芝生観察日記(1)
2008/01/10
 

 みなさん、明けましておめでとうございます。
 日産スタジアムも早いもので今年で10周年を迎えます。
 10年前の平成10年3月1日の「ダイナスティーカップ」でオープンして以来、同年の「かながわ・ゆめ国体」、「FIFAコンフェデレーションズカップ」や「2002FIFAワールドカップ」そして先日開催された「FIFAクラブワールドカップ」(以下、FCWC)、この他にもJリーグやコンサート、陸上の「スーパー陸上」など多岐に渡る競技やイベントに利用されてきました。
 この間、スタジアムで働く職員も少しずつ入れ替わり、日産スタジアムの歴史を知る職員は芝生と共にこのスタジアムを見守り続けてきた我々二人のグリーンキーパーだけとなりました。
 このスタッフブログは、当時在籍していた設備系の職員と交互に綴り始めた「芝生とっておきの話」が始まりです。しかし、その「芝生とっておきの話」も最後にアップされたのは今から3年も前となり、最近は他の職員が持ち回りで書くようになりついつい怠けていましたが、やはり10年を節目としてまたスタジアムの顔でもある「芝生」についての観察日記でも書いてみようかと思いました。ただ10年というだけじゃなく、この観察日記を書こうと思った一つの要因は昨年のFCWCの決勝前日の朝、GC(ゼネラルコーディネーター)から言われた一言がきっかけです。
 GCとは、FIFAの公式大会の会場毎にFIFAが派遣するプロデューサーのようなもので、試合が行われるスタジアムに関する全ての決定権を持っている人物です。このGCから言われた一言、それは「昨年より何故芝生が悪いんだ」という一言でした。実際は通訳されている言葉なのでその真意は解りかねますが、想うに芝生の色が去年より悪いと感じたのだと理解しました。実際我々も芝生の弾力などプレーする選手達にとっては良好な状態に仕上げられたという満足感の反面で、色合い的には決して満足していなかったので腹が立つ事もなく素直に受け止められました。でも、なんとなく自分自身に納得がいかない気持ちでいっぱいでした。というのも日産スタジアムの芝生は、選手達が最高のパフォーマンスでプレーできる状態であるのは勿論のこと、スタンドやTV映像を見ている人々に対する景観にも気を配らなければならないのです。

前回のFCWC準決勝戦当日の状況 今回のFCWC決勝戦当日の状況

※上の写真が前回と今回の比較ですが、日陰下と照明下で解りずらいですがゼブラ模様の鮮明さがポイントです。
 そこで、この節目の年に我々も新たな気持ちで日産スタジアムの芝生と向かい合おうと思い、芝生の観察日記を不定期ですがアップしていこうと思います。芝生の状態、作業の話、利用の話など色々な内容で楽しく、時には愚痴も綴っていきますので読んでやってください。
 前置きが長くなりましたが、最初の観察日記です。
・1月7日、年末26日からフィールドに掛けていた養生シートを12日ぶりに剥がしてやりました。ビニールのヒモを編んだような薄いシートですが意外に効果があります。FCWCの時には想うように育たずイライラした冬芝が見違えるように綺麗になっていました。まだまだ広いフィールドを見渡せば枯れた夏芝が茶色く霜降り状に見えますが、幸か不幸か3月のJリーグ開幕まで利用がないので十分開幕戦には整えられると想います。いや、必ず仕上げて今年はホームチーム我らがF・マリノスにしっかり勝ってもらわないと芝生も悲しいですよね。

シートを剥がした直後のフィールド 夏芝が消え、冬芝が優先した部分 夏芝の枯れ葉が残っている部分
・シートを剥がした直後のフィールド・夏芝が消え、冬芝が優先した部分 ・夏芝の枯れ葉が残っている部分
 ※ちなみに夏芝、冬芝という言葉を始めて見た方は、過去の「芝生とっておきの話(1)」で暖地型(夏芝)、寒地型(冬芝)という表記で説明しているので復習してみてください。  スタジアムの芝生はしばらくシートを張ったり、剥がしたりの繰り返しで芝生の顔を見られるのも週に1?2回程度なので、また何か変化が見られたら報告したいと思います。次回をお楽しみに。