観察日 : 2020年 9月5日(土)

場 所 : 水路周辺、バタフライガーデン周辺、メドウガーデン周辺

生きもの: エンマコオロギ、ヨツモンカメノコハムシ、セスジスカシバ

記事作成: 横山 大将(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

 

 9月に入り、少しは和らぐかと思っていましたが、まだまだ暑い日が続いているので、熱中症対策も気を抜けない今日このごろです。それでも確実に秋は近づいてきているようで、園内のあちこちから虫の鳴き声が聴こえてきました。鳴き声が聴こえる水路の方にゆっくり近づくと、枯れ草の下から「エンマコオロギ」が出てきました。

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エンマコオロギのオス(前翅のシワをこすり合わせて音を出します)

 

 「コロコロリー・コロコロリー」という鳴き声が聴こえたら、近くにエンマコオロギがいる証拠です。写真に収められたのは1匹だけでしたが、実際には10匹以上が私の足音に驚いたのか、枯れ草の下から飛び出してきました。どの個体も大きく育っていて、しばらくは涼しげな鳴き声で私たちの耳を楽しませてくれそうです。ちなみに、一般的なコオロギ類の雌雄の見分け方としては、お尻の部分に生えている突起の数がわかりやすいと思います。左右1本ずつの計2本であればオス、これに加えて中心に長い針のようなもの(産卵管)がついて計3本であればメスとみてほぼ間違いありません。「どうしてもコオロギの雌雄判別が必要になった!!」という方がいらっしゃいましたら参考にしてみてください。ただ、天敵に襲われたりして、欠けてしまっているものも見られるので、その際にはご注意を・・・。

 

 場所を変えて、次はバタフライガーデン方面へと向かいます。田んぼの周りのフェンスでアサガオが見事な花を咲かせていましたが、私が気になったのは花の方ではなく、葉の上にいた何か。近づいてよ~く見てみると、「ヨツモンカメノコハムシ」でした。

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ヨツモンカメノコハムシ(左:幼虫/右:成虫)

※幼虫は背中にフンを乗せて敵から身を守っています。本体はフナムシのような形です。

 

 中国や台湾、インド、ミャンマーなどに生息しているハムシの仲間で、国内では本来、沖縄本島以南の琉球列島にのみ生息していたとされています。しかし、近年では鹿児島県や長崎県、静岡県、神奈川県など、徐々に分布を広げていることで時折話題になります。サツマイモの葉を食害するため、農家さんからすれば害虫となっています。見た目はきれいなので、見て愛でる分には良いのですが、サツマイモ畑での被害が拡大しないことを祈るばかりです。

 

 さて、バタフライガーデンから大池へと移動してみましたが、本日はこれといった成果もなかったので、メドウガーデン周辺を見て回ることにしました。すると、茂みの中にハチのような昆虫が・・・。しかし、じっくり見てみるとハチではなく「セスジスカシバ」というガの仲間でした。一見しただけでは、ハチにしか見えませんでした。

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セスジスカシバ(左:全身/右:顔が映るように別アングルから)

 

 全身の色合いも顔の感じも総合的にスズメバチ感たっぷりでかっこいいです。ただ、実際のスズメバチに比べて頭が小さく、眼や触角の形状も異なるのでしっかりと観察すれば、見分けるのは簡単です。私自身、初めて観察できた感動でひたすら写真を撮っていましたが逃げる様子はなく、おかげで良い写真が撮れました。「スカシバ」の名の通り、黒とオレンジで縁取られた透かし彫りのような翅がたまらなく綺麗でした!いやはや、眼福、眼福・・・。

 まだしばらくは暑い日が続くようですが、熱中症にも、新型コロナウィルスにも十分に気をつけてお過ごしください!

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芝生観察日記 第106話

芝生観察日記の第百六話です。

令和二年9月 8日(火)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 

 残暑は厳しく、汗ばむ陽気が続きますが、朝夕にはだいぶ過ごし易くなってきました。

 周辺で聞かれる虫の音が、セミの声からコオロギに移り変わり、季節の移り変わりを感じます。

 いよいよ秋を迎え、夏芝の生育期間も残り少なくなってきました。

 先週5日の土曜日には、今シーズンのJリーグの行方を占う大一番となる首位川崎フロンターレと我らがF・マリノスの試合が行われましたが、結果は1対3という残念な結果で終わりました。

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 試合前のフィールド全景です。前回同様に夏芝とは思えない鮮やかなゼブラ模様がひと際映えました。

 試合後の状況は、7月12日に行われたFC東京戦から数えて6試合目となるこの試合が、今シーズン最も安定した状態だったと評価しています。

 中継の映像は、いつもと変わらずバミューダグラス特有の毛羽立つような細かな傷が散乱して見えましたが、実際試合が終わった後のピッチを見てみると、これまでのように芝の切れっ端が散乱することもなく、芝刈りをすれば試合をした後とは思えない状態でした。

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 試合後のピッチですが、所々毛羽立っている様子が窺えます。しかし、芝の切れっ端は見られません。

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 試合当日は、乾燥してドライな状態でした。前日に刈高12㍉で刈った芝生はやや伸びてボサボサした印象でしたが、その分ハイブリッド芝の課題である表面硬度の弾力を和らげている印象でした。

 夏場の晴れた日は、基本毎日散水していますが、試合当日のフィールド周辺は芝生作業だけでなく、多くの関係部署が朝早くから設営作業を行っているため散水は配慮して見送りました。

 その影響もあって、芝生が伸びて表面の弾力は増したものの、土壌の乾燥により硬度への影響は±0といった具合でした。これまで試合を迎える前には、バーチドレンを掛けて土壌を解すことで表面硬度の改善をしてきましたが、この試合はバーチドレンを掛けずに迎えたため、表面硬度が96Gmとかなり高い数値でした。

 やはりハイブリッド芝において適切なコンディションを維持するには、芝生の根や茎がしっかり土壌と絡み合ったマット層を形成させなければならないようです。

 そのため、表面硬度の改善と根の発根促進を目的としてエアレーションを行いました。今回は、細めの7㍉口径の側面排出タインを使ってコアリングを行いました。

 エアレーションのタインには、大きく分けて3通りあります。抜いた芝生のコアをパイプの上部から排出する中空タイプと、今回使った側面から排出するタイプのほか、太い釘で穴だけ空けるむくタイプのタインがあります。しかし、実際は他にも十字タイプやスライシングタイプなど、芝生の状態や季節、目的に応じてタインの種類を使い分けています。今回はタインの写真が揃っていなのでまた別の機会にでもご紹介したいと思います。

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 次の試合は、13日(日)のセレッソ大阪戦です。どれだけ表面硬度が改善されたか楽しみです。

 まだ残暑はしばらく続くようですが、新型コロナウイルスだけでなく、熱中症の予防にもお気を付けください。

「新横浜公園四季折々の生きもの観察会」(協賛:株式会社春秋商事)今年度の2回目を開催しました。

この観察会は、鶴見川の多目的遊水地として水と緑が豊かな新横浜公園と生息する多種多様な生きものの理解を深めていただく機会として、年5回を予定しています。

今回は、公園内の大池や水路から水を採取して水の中の小さな生きものを顕微鏡で観察します。

参加のみなさんが集合した時間にはすでに30度を超える暑さになっています。日陰のルートで投てき場・スケボー広場そばの水路に向かい、公園内に生息する生きものを教えてもらいました。

講師はNPO法人鶴見川流域ネットワーキングさんです。(以下npoTRネット)

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npoTRネット横山さん ブラックバスを手づかみ(公園内で採取された魚の説明)

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在来種、外来種さまざまいます

 

「プランクトンネット」はロート状になっていて、先端にコックがついています。水に投げ入れてゆっくり手繰り寄せ、コックを空けてプランクトンを採集します。

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npoTRネット阿部さん 微生物とプランクトンネットの説明をしています

 

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プランクトンネットを引いて採集する様子

 

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参加者のみなさんにも網で採集してもらいました。藻などに生きものがついているかな?

お待ちかねの顕微鏡観察です。顕微鏡を覗き、反射鏡の角度を調節して視界を明るくし、ステージ(観察するものをのせる台)を下げながらピントを合わせていく調節ねじの使い方を確認しました。採取してきた水や藻をスライドガラスにスポイトで垂らすのが「むずかしい・・・」とつぶやきながらやっていたお子さんもいましたが、上手にできていましたよ。最初はなかなか生きものを見つけられなかった保護者も真剣にのぞきこんでいます。

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「うわぁ!いたー!」「動いてる!」と大人も大喜び。アオミドロのような糸状のもの、ミジンコ、ケイソウ、ゾウリムシ、ワムシなどたくさんの小さな生きものを見つけることができました。そしてみなさん顕微鏡越しにスマホで撮影ができました。

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ケンミジンコのなかま

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ミミズのなかま

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ミカヅキモのなかま

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アオミドロのなかまを顕微鏡で見つけ、スマホで撮りました

 

今回観察したような水の中で暮らしている微生物は、私たちの暮らし中で大活躍しています。それは水再生センター(下水処理場)です。微生物がたくさんの汚れを食べて二酸化炭素と水に分解して、きれいな水に戻してくれています。新横浜公園のすぐそばを流れる鶴見川は、家庭からの生活排水によって汚れていましたが水再生センターの整備がすすんだおかげで、生きものが豊富な水の環境となりました。生きものの観察をきっかけにこれからも自然環境や私たちの暮らしについて考え、行動していきましょう。

 

なお、今回観察会のために特別に魚とりや水の採取を行なっており、普段は禁止となっております。また、公園内で捕まえた生きものは放してあげるなどの配慮をお願いいたします。

観察日 : 2020年 8月28日(金)

場 所 : 水路周辺、大池周辺

植 物 : クズ

動 物 : マルカメムシ、ツクツクボウシ、イソヒヨドリ

記事作成: 阿部 裕治(NPO法人鶴見川流域ネットワーキング)

  

 一ヶ月前までは雨続きで夏の暑さが待ち遠しかったですが、8月に入ると連日の厳しい暑さ。この日も猛暑に近い気温となり、肌がジリジリと焼けるようで、汗が次々に噴き出してきました。

 公園に入るため、堤防の法面階段を下りていると脇にクズが生えていました。そういえば夏が花期だったなと花を探しながら少し歩くと咲き始めているものを発見。花は甘い香りがするため久しぶりに嗅いでみると、あの臭いにおいがしてきました。そう、クズなどマメ科の植物によく付くマルカメムシの臭いです。しかし、黄褐色のカメムシは見当たらず、草色で毛がフサフサ生えている生きものが動き回っています。調べてみるとマルカメムシの幼虫でした。幼虫がこんな姿をしているとは初めて知りました。

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秋の七草・クズ 花が咲き始めてきました。

    

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臭いの正体はマルカメムシの幼虫でした。

  

 セミは、アブラゼミ、ミンミンゼミに加えて、ツクツクボウシの「オーシツクツク、オーシツクツク」という鳴き声も聴こえてきます。夏真っ盛りを感じる声ですね。鳴く姿を動画で撮影しようとすると、鳴き声がストップ。セミもこちらの気配を感じたのか分かりませんが、20分ほど待機してようやく鳴き始めてくれました。

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ツクツクボウシ

 
 

  亀の甲橋の橋脚まわりを確認していると、イソヒヨドリの雌を見つけました。ヒヨドリと名前についていますが、冬鳥のツグミと同じヒタキ科に属します。主に海岸の磯場で見られ、ヒヨドリに似ていることが由来のようです。橋脚も崖のようなものですし、こういった環境が好きなんですね。まだ暑い日が続きそうですので、日陰で休息をとりながら無理せず観察をしましょう。

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イソヒヨドリ

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芝生観察日記 第105話

芝生観察日記の第百五話です。

令和二年8月28日(金)

<~ Road to 2019&2020 ~>

 

 残暑見舞い申し上げます。

 早いもので8月も残り4日となりました。記録的な長梅雨の後は、記録的な猛暑日が続いています。体調管理には十分お気をつけください。

 日産スタジアムでは、8月23日(日)と26日(水)にJリーグが開催されました。

 結果は、マリノスが連勝し、チームに勢いが出てきました。チームが勝ってくれると我々にとっても励みになります。

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 26日の試合前のフィールド全景です。猛暑に後押しされ、セレブレーション本来の濃緑な色合いで、とてもバミューダグラス系の芝とは思えません。この時季、ティフトン419ではこれだけのゼブラ模様はなかなか出せません。また、8月10日にバーチカルカットを行い、芝生の密度を梳いた中で行われた2試合でしたが、26日の試合には、ほぼ回復して表面上は完全な状態で迎えることができました。

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 そして、試合後の状況は、バミューダグラス系の芝生特有の、傷口の周りが毛羽立つような細かい傷が散乱しました。刈込みを行えば目立たなくなるというのはブログで何度も書いていますが、この傷はテレビ画面でも結構気になりますし、実際よりも荒れて見えるのが難点です。

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 日産スタジアムで行われる最近の試合は全てナイターなので、試合後の巡回は照明下というのもあって傷が目立ち辛いものです。照明下で荒れたと感じる場合は、傷みがよっぽど酷い状況が多く、翌朝改めて見てがっかりする場合があります。今回は傷の大小はあっても幸い問題となる状況ではありませんでした。

 次回、日産スタジアムで行われるJリーグは9月5日(土)の現在首位の川崎フロンターレ戦です。

 それまで10日間あるため、2連戦で傷んだ傷の回復と共に、表面に堆積したサッチの除去や来年に向けて貯蔵養分を蓄える親株を増やすため、7月にも行ったサッチング掛けを実施しました。

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 今回のサッチング掛けも7月と同仕様で実施しました。次の試合まで2週間程度の養生期間が確保できるならば、バーチカルカットをもう一回実施したいところでしたが、今回は10日しか確保できないのと、残暑もいつまで続くか不透明な部分があるのでダメージが少ない分、効果も薄いサッチング掛けで我慢したのが本音です。

 本場アメリカでは、最盛期に毎週バーチカルカットを掛けている芝生だけに、日本の短い夏とスタジアムの利用スケジュールや特殊な環境を考慮すると、この芝生の日本におけるベストな状態という指標の設定が難しいのが現状です。

 どんな芝生にも、長所短所があります。長所を伸ばして、日産スタジアムに適した管理指標を構築していきたいと考えています。

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